折原家
□父親の嫉妬
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<父親の嫉妬>
新宿 保育園内 すみれ組
視点なし
「筑紫ちゃんのおとうさんとおかあさんってどんなひとー?」
「うーんとね……ママは優しくて……パパはママに優しいの!」
「??筑紫ちゃんにはやさしくないのー?」
都内の保育園では今の時間、自由工作として自分の作りたいものを自由に作る時間としている。
4歳の子供達数十人がそれぞれ絵を描いたり、粘土でロボットを作ったり、クマやネコを作ろうとしていた。
その中で、黒髪に僅かにはねたくせ毛が特徴的な少女の迎え側に座る男の子が、彼女に問いかける。
「やさしいよー!ママもパパも、いっぱいいーっぱいあそんでくれるの!でも、パパはじょうほうやしゃんだからいそがしいんだって!」
それに少女は太陽のような明るい笑みを浮かべ、自分の得意な絵を描き、それに色を付けているようだ。
その絵の中では男と女らしき人物が手を繋ぎ、その間に二人の子供が描かれている。
「じょうほうやしゃん?」
「うん。じょうほうをうっておかねにするってパパがいってた!」
「へんなおしごとだねー!」
純粋な意見を答える男の子に少女―――折原筑紫は眉を吊り上らせ、怒ったような口調で男の子に口を開いた。
「へんじゃないもんっ!パパ、いっぱいいっぱいおしごとして、あたしと紫苑におようふくかってくれたりするもん!」
「へんだよー!じょうほうってだいじだっておとうしゃんいってたもん!」
「……だって、だってぇ……っ、パパのおしごとしらないもん……っ!パパ、あんまりあたしとか紫苑におしごとおしえてくれないもん……!」
[変だ]と言い続ける男の子に最後は釣り上がらせていた眉を八の字に曲げ、今にでも泣きそうな顔をしている。
それに男の子は慌てて[ごめんね!]と言うと、筑紫の目から流れる涙を自身の服で拭う。
「うぅー……きょう、パパにどんなおしごとなのかきいてくるー」
落ち着いてきたのは筑紫は自分の手で涙を拭いつつ、呟くと男の子は満面の笑みを浮かべ、言葉を吐き出す。
「うん!おしえてもらったらぜったいおしえてね!」
「やくそく!」
「うん、やくそくー!」
指切りげんまん、と小指同士を絡ませ、一定のリズムを刻み、約束をする二人。
約束をし終わる頃には工作の時間は終わりを告げ、担任らしき先生が[お片付けしましょうねー]と手を叩きつつ、子供達に声を掛けた。