折原家

□君への贈り物
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『でも二人だけじゃ危ないんじゃ……』

「あら、貴女も行ってきなさいよ。私が留守番しててあげるから」


波江さんが何を考えているのか解らないが、日頃の御礼も兼ねて今日という日に渡せば―――という波江さんからの配慮からなのか、

それともただ単に二人が五月蠅いから―――という理由なのか解らないが、ありがたく受け取っておく。


―――私が、臨也に……。


考えてみれば臨也からプレゼントを貰った事は数えられない程にあるのだが、私から彼に何かをプレゼントした事があっただろうか。

双子が生まれる前―――出会ってから最初のプレゼントが指輪だった。今でも私の首にネックレスとして大事にぶら下がっている。

だが、自分から―――となると彼の誕生日にケーキなどを作るぐらいでプレゼントらしいプレゼントなんて渡した事がないかもしれない。


「マーマー!とーとにぷれれんとするんでしょ?はやくいけぶくろいこうよー!」

「はやくはやくー!パパのぷれれんとなくなっちゃうよぉ!」


筑紫が何を買いたいのか解らないが、私の右手の袖をグイグイ、と引っ張って早く行きたくて仕方ないのか、足踏みをその場で繰り返している。


「なくなっちゃう、なくなっちゃう!とーとのぷれれんと!」

『……二人は何を買うつもりなの?』

「へへへ、ないしょ!」

「あたしもないしょ!」


悪戯っ子のように一旦足踏みを止めると口元を歪ませ、満面の笑みで人差し指を口の前に置く。二人はすぐに[臨也]という父親のプレゼントが決まっているのに私だけ決まっていない。

それが何だか悔しくて私は僅かに口元を膨らませると、それに気付いたのは波江さんで、彼女はそんな私の表情を見て小さく笑った。


「貴女の顔、どっちが子供なのか解らないわよ?」

『酷いですよ……波江さん』

「そんな事言ってないで、早く行ってきなさい。存分に楽しんでくるといいわ」


やはり早くこの家から私達を追い出したいようだ―――と言ってもここは私達の家なのだが。

二人も待ちきれないのか、先程波江さんに渡されたお金を握り締め、一足先に玄関に向かっていた。私も[行ってきます]とだけ告げると、玄関に向かい、サンダルに履き替える。


「これ、パパがかってくれたんだよー!いいでしょー!」

「ずるーい!ぼくもとーとにかってもらいたいー!」


二人は玄関でもどっちがどれだけ臨也に買って貰ったのか―――という事で言い争いを続けつつも、きちんと用意だけは済ませている。


―――こういう所だけは臨也にそっくりだよね……。


「ママ―おそいよぉ!はやくはやくー!」

『はいはい、怪我するから引っ張らないで』

「あー!ずるーい!紫苑、ママとおててつないでるー!」


出たくて出たくて堪らないのか、紫苑は先程まで袖だったのが手、というより腕を掴んで強引に外に連れ出そうとしている。

それに若干引っ張られつつも何とかこける事は避けられたようだ。そのまま紫苑は私の腕を引っ張り続けている弟を見て、筑紫は反対側の腕を掴み、強引に弟の前を歩きだす。


『ちょ、ちょっと……。二人共……っ』

「ママとあるくのはあたし!」

「ぼくだよ!」


小走りで走る二人に私は中腰の状態のまま引っ張られている為、体の体勢がキツくて声を掛けるが双子には聞こえていないようだ。


―――筋肉痛になる……っ!


来良学園を卒業してから全く運動、という運動をしていない為に、無理な体勢を続けていると筋肉痛になるんじゃ―――と思う程に腰を傷めてしまう。

しかし、無理に二人から腕を振りほどくと泣き出してしまうし、ころんで怪我をしてしまうかもしれない。

それだけは避けたい―――そう思った所でどれだけ自分は親バカなのか、という事を思い知らされた。
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