折原家
□始まりの話
2ページ/14ページ
二人は顔はよく似ているのだが性格や雰囲気は自分達の生き写しを見ているような感覚で、筑紫は私の性格に似ているし、雰囲気もどことなく似ている。
紫苑はどっちかというと臨也の性格に似ていて、そのうち[ぼくは、にんげんがだいすき!]なんて言い出すんじゃないかと内心ハラハラしていた。
それでも二人とも可愛い自分達の子供である事に代わりは無いし、私の二の舞にしたくない。
「とーとー、あそびにいーこーうーよー!」
「ダメ。外は危ないっていつも言ってるでしょ?」
紫苑のお願いを一刀両断すると、椅子から下りて台所に向かう臨也の姿があった。それに気付いた私は立ち上がろうとするが―――
『コーヒーなら私がやるよ』
「いいよ、愛子は二人に構ってあげて」
台所でお湯を沸かしているのか、姿が見えなくなるとここぞとばかりに、臨也の机に居た紫苑と筑紫が持ってきた絵本を読んでいる私に近付き、擦り付いてきた。
「マーマー、とーとにいってよー。おそとであそびたいって!」
「あたしはおへやで、ママとパパとあそびたいなあ」
「ダメだよ、とーとと、ぼくと、ママでおそとであそぶの!筑紫はおるしゅばん!」
「いーやー!紫苑がおるしゅばんしてればいいでしょ」
そろそろ喧嘩になりそうな二人を見ながら私はどうしようか考える。
筑紫の考えは、私と臨也で部屋で遊びたい。紫苑は留守番―――部屋にいるのに留守番ってどういうことだろうか。
苦笑いをしながらも、次に紫苑の考えはこちらも私と臨也と外で遊びたい。筑紫は留守番。
という事らしい。
見事なまでに私と臨也はどっちかで遊ばなければいけないらしく、まだ家事も終わっていない。
そんな状態で外に遊びに行ってしまうと非常に大変な事になりそうだ。臨也も外で遊ぶのはダメだって言ってるし―――でも、ダメだって言うときっと紫苑はスネるだろう。
どうすればいいのか解らなくなり、これは一家の大黒柱である臨也に決めて貰う事にした。
「……人任せにしないでよ……」
それを全部伝えるとコーヒーカップを持った臨也が呆れた顔で私の隣に座った。
『だって……。じゃあ、臨也は紫苑と外で遊んで私は部屋で筑紫と……』
「せっかくの家族なのに、離れ離れは嫌だよ」
離れ離れ、といっても一日、二日離れるわけでもないのだから、離れ離れにはならないのだが、臨也はそう言いながら私に抱きついてくると耳元で小さく、離れたくないとボソ、と呟いた。
「あー!とーと、ダーメ!ママはぼくのっ!」
「ちがうよ、あたしのー!」
臨也を私から離そうとする二人を見ながら、臨也は少し声のトーンを下げると、
「何か俺……二人に嫌われてない?」
と悲しそうに言葉を吐き出す。しっかりと私の膝の上と隣に座る二人は、ご満月に[ヘヘヘー]と可愛らしく笑っている。