リクエスト
□怖い事
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それが当たり前のように、それが当然のように二人は笑顔で色々なものを教えてくれる。
別に目が見えないわけではないので上を見上げれば青い空が見えるし、周りを見渡せば木や建物など、
変わり映えしない世界が広がっているのだが、双子はあれこれ嬉しそうに話をしているのでそれを聞くのも一種の楽しみだ。
「パパはいけぶくろ、ってところでママと会ったんでしょー?いけぶくろってどんなところー?」
「ぼくもいけぶくろ、行ってみたいなぁ」
「……。……こことあまり変わらないよ」
母親や時々会う大人達に俺の事を聞くのだろう。
二人は無邪気に、こちらの心情なんて知らないように俺と彼女が出会い、
そして今の状況を作った原因がいる場所を問いかけてくるのだが、いい思い出はないし、結局俺はあの場所から逃げたという事になるのであまり思い出したくない。
カッコ悪い所は見せたくない、というのもあるのだが、思い出す度に僅かに足が疼き、治っている筈なのに痛い、と感じる。
痛くて痛くて仕方なくて―――平然とした顔を保ちながら話をしているのだが、きちんとなっているのか解らない。
―――何なんだろうね、本当。
周りは、というか彼女は足を治して欲しいと言う。
きちんとリハビリをすれば立って歩ける筈なのに、俺はもうこれで充分だとさえ感じている。
これは自分への戒めだと、化け物に無残に負けた[折原臨也]という人間はあの地で死んだのだ、と。
それでも過去は俺を追いかけてくるし、実際俺の知らない所で子供達は俺が生まれた場所、俺が住んでいた場所、俺が生きてきた場所、
そして死んだ場所について聞いたりするのでどんな所なのかと興味津々だ。
「……パパは、いけぶくろきらいなの?」
「いけぶくろの話をすると、父さん、いたそうな顔する、どうして?」
「……。お前達の気のせいだよ。ほら、ママに何か甘いものでも買って帰ろうか」
―――あの時の事を話すと嫌でも思い出す。
―――だから……あまり思い出したくないんだ。
―――――――……
数十分後 某マンション
愛子視点
「ただいまー!」
「ただいまー!ママ、あまい物買ってきたよー!」
「……ただいま」
『おかえりー!……パパ、どうしたの?暗い顔してるよ』
「……少し疲れただけだよ」
『……そっか』
部屋の片づけなど忙しなく動いたり、少し雑誌などを読んで休憩したりしていると扉を開けた双子が元気に顔を出し、その後から車椅子に乗った臨也が暗い顔をしながら入ってきて―――
何かあったのだろうかと問いかけたが、私ですら壁を作り、目を逸らし、ゆっくりと車椅子から降りてソファに腰掛けた。
―――そんな事言われたら心配しちゃうじゃん。
『……お疲れ様。今日はどんな所を散歩してきたの?』
「人通りが少ない通りとか、コンビニとか、公園とかかな。いつもと変わらないよ」
『私は一緒に散歩した事ないもん。どんな所でどんなものを見たのか、話してくれなきゃ解んないよ』
「……それもそうか」
『……。……パパ、足痛む?マッサージしようか?』
「……よく分かったね。子供達は気付かなかったのに。……お願いしようかな」
平然と話をしているように見えて、どこか我慢しているような顔をする臨也に違和感を感じ、問いかければやはり考えていたのは当たっていたようで両足をソファの上に乗せ、
そう言うのでゆっくりとマッサージしていくと最初の頃は苦痛に歪めていたが、
段々と落ち着いてきたのかその表情も緩んでいき、[悪かったね]と言って足を元の位置に戻す為、離れた後にそのまま隣に腰掛けた。