折原家2
□初めてのお風呂
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『喧嘩しちゃダメだからね!』
「「はーいっ」」
赤ん坊の娘は双子に任せて私と臨也は目的であるバスタブを探す。
段ボールの中を見たり、何故かタンスに大事にしまってある双子の玩具だったり、大事なものなのか、隠してある書類の束だったり、と色々なものがあったがお目当ての物は見つからない。
―――本当、どこにしまったんだろう……。
全て私が管理しているわけではないので、自分の部屋の中にある物がどんなものがあってどんなものを捨てたのか、何をこういったマンションに移動させたのか―――全く解らない。
『見つかったー?』
「ここら辺だったと思ったんだけどねぇ。二人の小さい時の服ならあったけど」
『え、マジで?ちょっと見たい』
それから数分後。
私達が探した時のような広いマンションではないのとそこまで物で埋め尽くされているわけでもないので探す物がなくなってしまい、違う部屋を担当していた臨也の方に行けば、
首を傾げつつ、報告するので傍に寄って行き、段ボールの中を見れば今の佑梨ぐらいの大きさの服が何枚も入っており、ちょっとだけ笑ってしまった。
―――やっぱり最初の子供だからって思ったのかな。
双子だから一般的な子供の倍必要で―――ミルクだって飲むようになれば粉ミルクや哺乳瓶だって2つ必要で。
それに臨也も外に出る度にお土産のように玩具やら服やら買ってきていたのでこれだけで済んでいるのが嘘のようだ。
「あれこれ思い出してるのか知らないけど、服を見ながら百面相しないでくれない?」
『え、そ、そんな表情変わってた……?』
「笑ったかと思えば、苦笑いしてたり、懐かしそうにしてたり、溜息を吐いたり、忙しそうだと思ってたよ」
『っ、何か恥ずかしいな……』
いつものように私の事を面白そうに観察していたのだろう。
彼がそういう人間だと知っていても、一人であれこれ考えている時に話しかけられるというのは恥ずかしいし、あまり見ないでほしいとも思う。
「とりあえずここにはないって事だね。場所を移動しようか」
『そうだね、二人共ー、行くよー』
「「はーいっ」」
――――――――……
新宿 某高級マンション
愛子視点
『本当……。……ここまで来ると何も言えないね』
「無駄にお金を使ってる、って言いたいの?」
『そういうわけじゃないけど……倉庫とかそういうの借りればいいのにって思って』
「倉庫なんてドアを開けられたら最後じゃないか。一箇所にまとめておくなんて危険な事、俺にはできないなぁ」
『それは、そうなんだけど……』
正しいのかもしれないが、どうなんだろうとは思う。
人がたくさんいるマンションだからこそ監視の目があって、物を隠すのには丁度いいのかもしれないが、
それにしてもどこも生活するには十分過ぎる程の広さがあり、絶対何十万もの家賃がかかっているのが分かるような外装をしていた。
「まあ君が言いたい事は分かるよ。……それなら君はどういう理由なら喜んでくれるかな。思い出を大事にしたい、とか、手放すのが面倒だ、とか?」
『……ううん、いいよ。パパの好きなようにしてくれれば。ただ、維持費が凄いだろうなぁって思っただけ』
「そうだねぇ、一ヶ月でかなりの額にはなるよ。ま、払えない額ではないし、使い道もあるから今のところはこのまま、かな」
―――どんな使い道なんだろう……。
ずっと倉庫のように使っているのに、そこからどうなるのだろうか。
疑問は残る所ではあるが、考えても仕方ない事は考えないようにしているので息を吐き出し、探し物に集中する。