Dream SS

□独占欲
1ページ/3ページ






「レオンと一緒にお出掛け出来るなんて。こんな嬉しい事、滅多にないよ」

ランスはご機嫌だった。
何故なら、大好きなレオンと二人で買い物に来ているのだから。
二人きりで。大事な事だから、二回言っておく。

「そんなに喜ぶものなのか?」
「うん。とっても!」

弾けんばかりの彼女の笑顔に、レオンはほんの少し顔を綻ばせる。

「そこまで喜んでくれるのなら、私もわざわざ外へ赴いた甲斐があったというものだ」
「えへへ」
「さぁ、何が欲しい? 私が買ってやる」
「本当? じゃあ僕は──あれが欲しい、な」
「ふむ」

レオンが会計を済ませてくれている間、ランスは外で待つ事にした。
寒空の下。少し手足が震えるけれど、大好きな彼を待つこの時間さえもとても心地がいい。

──ずっとこんな時間が続けばいいのに。

「おねーさん、こんにちは?」
「……?」

ふと顔を上げると、見知らぬ美形の男性がランスの視界に入ってきた。
見た感じ、物腰が柔らかそう。

「今、お一人ですか?」
「いや……連れを待ってますけど」
「そうですか。いや、あのですね? もしお暇であれば、ご一緒にお茶でもどうかなぁって」
「あ。それは、無理ですね」

そこはきっぱりと断った。
ランスは中性的な外見から、話し掛けられる事も少なくない。
そして、その対策としてウルフから「そういうのに絡まれた時はきっぱりと断れ」と言われていたのだ。

「そう、ですよね。もし良かったら、と思ったんですけど。あなたみたいに綺麗な方とゆっくりお話出来たらなぁって」
言いながら、男性はランスの手を取っては両手で包み込み、微笑んだ。
「あの」

何だろう。柔和な人のナンパはこうなのだろうか?
よく分からないが、どうやら今、自分はナンパに遭っているらしい。
何故、ナンパの対象に自分を選んだのか。そこは疑問に思う。

「やっぱり、ダメですか?」

少し上目遣いで、男性は問い掛けてくる。

あぁ、これはあれだ。
ダメだったら引きますよ感を出しながらも、実際は半ば強引に連れてかれてしまうヤツ。
きっと自分の外見の良さに気付いている。
厄介なのに引っ掛かったかも知れない。

そう思った時だった。

「貴様、其処で何をしている」
「!」

レオンが店から出てきた。何と丁度良いタイミングなんだろう。
彼は男性に握られているランスの手に目を凝らし、それから男性を見る。

「彼女に何か御用かな?」

言葉、そして声音こそは丁寧だが、男性を見ているその目は鋭かった。
一般人だから手加減はしているものの、確実に敵視している。

「あ、え、えっと……すみませんでした!」

それに怯えたのか、一目散に去って行く男性。

「行っちゃった」

流石はレオン。目だけで人を脅かすのはお手の物だ。
男性の去って行った方向を見ながら、ランスは呟いた。

「……」
「ありがとう、レオン」

礼を述べる。しかし、レオンは黙ったまま動かない。

「レオン?」
「──行くぞ」
「え?」

ぐっと手首を掴まれ、そのまま連行されるがままになる。

「ちょ、レオン? 何処へ行くの?」

一体、何処へ行くのだろう。その疑問にレオンは答えなかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ