色々な世界の腐蝕と物語

□泣いた笑った
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「不動?」



部屋の扉をノックする、返事はなかった。

俺が何故不動に用があるのかと聞かれれば、それはただ会いたかったと答える。

…恋人なのだからしょうがない。



「…居ないのか?」



だが今現在、部屋を訪ねても返事はない…居ないのか、もしくは居留守か。

居留守なら何故無視されなければならないのだろうか?と俺は考えた。



『見当たらないな、そんな理由。』



もう一度。



「不動、居ないのか。」

「んだよ、うるせぇ。」

「やはり居たか。」



やっとのことで返事を返した不動にほっとした、流石の俺も無視は嫌だった。



「何の用だよ。」

「会いたくて来た。」

「恥ずかしい奴、誰が来るかも分からない廊下でそういうこと言える。」

「恋人のためなら。」

「あっそ。」



素っ気ない反応、でも引っ掛かることがあった。

声が、泣いた時と似ている。



「入れてくれないか。」

「ハァ?何で入れなきゃならない訳。」

「入れてくれ。」

「嫌だね。」

「不動。」

「しつけぇよ。」

「泣かないでくれ。」



言葉が途切れた、不動は間を空け言った。



「透視でも出来んの?鬼道ちゃん。」

「声で。」

「うわ、何それ…やっぱ返事するんじゃなかった。」



それから不動は何も言わず、俺も何も言わなかった…ただ此処は廊下で、暗いとはいえ誰が通るか分からない。

俺はもう一度言う。



「入れて、くれないか。」

「…どーぞ。」



鍵が開けられた、でも扉が開かない所を見ると勝手に入れと言うことか。

ノブに手をかけて扉を開けた、見られたくないのかベットに潜り込んだ不動に話しかける。



「何故泣く。」

「あー…寂しいから?」

「何故。」

「分からねぇ。」

「じゃあ何故俺の前で泣かない?」



甘えたくないから。

そう答えた不動は鼻を啜り、もぞもぞと壁の方に逃げた。




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