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□であい。
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雨が降っていた。
今日は嫌な日だった。
明日もきっと最悪だ。
どうしよう。まず家に帰って、それで……
剃刀でも包丁でもシャーペンでも鉛筆でも何でもいいから手首でも切って腕もきってつぎはあしをきってつぎはかきむしってつぎはつぎはつぎはつぎはつぎはつぎはつぎは……………
親にばれないように後始末だね。
少年は世界が嫌いだった。
自分は何で生まれて来たんだろうと思うくらいに。
いつでも世界は汚い。
自分は何で生まれて来たんだろう…………?
いつも思っていた。
『アイツ』に必要とされるその時までは。
走っていた足を止めた。
道の真ん中に何かがある。
マネキン?人形?にしては良くできてる。
黒―紫か?―の髪、滑らかな肌。そして今にも開きそうな美しい目。
これ棄てた本人はもったいないことしたな。
マニアには高く売れるだろうな、コレ。
雨に打たれたまま彼―…浸は思考する。
しかしなぜ道路の真ん中にあるんだ?
カラスか何かの仕業かな?…というよりこのままでいいのかな?
浸はビニール袋に入れられた『それ』を見つめる。
本当良くできてる。
人間みたい。
でも自分は綺麗な人形見てニヤニヤする変態じゃない。
(バイバイ。)
浸はその人形を見下ろしたあと、踵を返して歩き始めた……………―が。
ガシッ。
「……?」
何かが足にしがみついた。
浸は自分の足元に目をやる。そこにはビニール袋に入れられた『それ』が、手を伸ばして自分の足にしがみついていた。
「………………。」
思考が止まる。
お化け………か?
「……っ!」
よく分からないが恐ろしくて、走って逃げ出そうとした。しかし足にしがみつくその手の力は恐ろしい程強く、なかなか離してくれない。
「……っ!!……っっ!」何だかパニックになってきた。
これってホラー番組とかに投稿するといいのかな?
そんな呑気な事をパニックした頭で考えていた。
一応必死に逃げようとはしてる。けどやはりその人間離れした握力をもつ『それ』は、びくともしない。
その時、
やかましい雨の中。
小さく、
ほんの小さく、
響く、声。
「ま……ス、タぁ……。」
……………?
マスター?
何だそれ。てか誰だよ。
僕じゃないよ。わかんないの?
「マ……スた……。」
「………………。」
「苦しいでス。マスター……ぁ。」
苦しい。
確かにそう言った。
なにそれ僕だって苦しいよ。いいから離せよ。
早く、早く切りたい。
早く、楽になりたい。
早く……………
「くるしいです、マスタぁ……。」
あぁ。
一緒なのかもしれない。
コイツと僕は。
苦しいね。
苦しいよ。
でも、そんなもんでしょ。
世界なんて…………
気づいたら自分は、
そのビニール袋を背負っていて、
自分の家に向かって歩き始めていた。
続く。