短編

□きらきらを私にもください
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カリカリというシャーペンの音しか聞こえない。


まあそりゃそうね、授業中だし。



ぷち、



あ、シャーペンのしん折れた。





がさごそと筆箱をあさる。


入ってないはず。


この間切らしちゃったからなあ、




仕方ない、となりの席の伊佐敷にでも貰うか。




彼の方をみると、真面目に問題を問いている。


その姿はスピッツのような煩さは感じられない。


青いシャーペンがやつの前で小刻に動いていた。




もう受験生だもん、いくら伊佐敷でも真面目にやるか。


いや、こいつの場合追試になると試合に行かせてもらえないからか。



一度みたことのある彼の試合は、とっても面白かった。



煩いからどこにいてもわかる。そしてその水を得た魚のような彼が、眩しかった。




いいなあ、たのしそうだなあ、





なんて、ちょっと羨ましかったりした。




「さっきからなんだよ、」





どうやらずっと伊佐敷のことをみていたらしい。
私は変態か。




「にやにやして、気持わりぃ」




おぞましい物をみたかのようなその表情に、溜め息が出る。
そこまでいわれて私が傷付かないとでも思ってんのか。




「はいはい悪かったですね。気持悪くて」




シャーペンのしん貸せ。



言えばおとなしく貸してくれる。
そういうとこは優しいんだよね。

…でも授業中の伊佐敷みててもあんま面白くない。



好きなことやってるときが一番かっこいい。





「ほら、……なんだよ」




「あんた、野球やってるときはかっこいいのにね」





素直にそう言っただけなのに、なんでか真っ赤になって大声で「馬鹿野郎!そういうこと軽々しく言うんじゃねえ!」なんていうから、
みんなの注目の的になって、挙句先生にも二人揃って怒られた。






きらきらを私に下さい






気持悪いって言ったのも本当は恋する表情の女の子にやきもち妬いたから、という裏設定

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