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□オレオ
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さくり
彼女の口の中に、焦げ茶色をしたクッキーが咀嚼される。
「ね、栄口ってオレオ食べる?」
「食べるけど、それがどうしたの」
「わたしがいま食べてるから」
「ふーん」
「じゃ、さ。
どうやってオレオ食べる?」
他愛ない会話を、隣とする。
彼女の不可思議な質問に、話し相手である彼は戸惑う。
「どうやってって、どう?」
質問に質問で返すという、国語のテストでよくしてしまう過ちを彼はした。
それほどまでに彼女の質問は突拍子もなく、また、不可思議であった。
「……そうね、例えば、」
こんなふうに、と呟きながら彼女は細い指でクッキーをつまんだ。
そして上に重ねられている一枚をはがした。
オレオは白いクリームのあるクッキーと、そうでないものとに分けられた。
「わたしがよくやるやり方」
そう言ってクリームのないクッキーの端を口にふくむ。
さくり
と音が鳴る。
CMなんかだと牛乳つけるわよね。あれ、結構懐かしい。やろうかな。
ぽつぽつと言葉とクッキーの粉を零しながら、頬杖をつく。
彼は先程の質問の趣旨に気づき、口を開く。
「あぁ、俺はあれだな」
そういいながら彼は彼女のオレオを一枚とる。
盗み厳禁。と彼女が口を開く前に、ふさがれた。
彼らの口の間にはオレオがあった。
俺、こうやって食べる。
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