本
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「……雁夜先輩」
窓の外はすでに朝。今日も元気にスズメが鳴いている。
昨晩路地裏で拾った高校時代に知り合った先輩。
いまは容態も安定して穏やかに眠っている。
ホッと肩から力を抜く。
峠は、越えた。
握りしめた彼の右手は、平常の体温を俺に伝えていた。
徹夜で治療した甲斐があったもんだ。
ちなみに寝ようとしても先輩が俺のベッド(ダブル)を占領しているので、居間にあるソファーで眠るしかない。
そっと手を離して立ち上がる。
久しぶりに酷使しまくった体が悲鳴を上げているのでそろそろ休もうか。
ソファーに横になって、意識を暗闇に落とす間際まで考えていたのは、起きたときに寝違えていなければいいのにな、ということだけだった。
微睡む無意識が、とうの昔に無視をして置いていった感情を細やかに拾い上げていたことなど、意識のない俺は気づかなかった。
眠れるウ゛ェーオル彼はまだ起きたくない
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さてさてこの子はいったいどんな人?