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聖杯戦争は、終わった。

誰が勝者なのかわからないけど、自分じゃないことはわかっていた。

バーサーカーには迷惑をかけたな、と一人ごちる。


当てもなく逃げて、容態が急変して、苦しくてどこかで倒れた覚えはある。
でも、こんな柔らかい場所じゃなくて、背筋が凍るくらい硬く冷たい地面だったような気がするが。



「ここ、は……?」



目が覚め、気怠いまぶたを薄くあける。
クラクラする視界は滲んで輪郭の曖昧な世界を脳に届けた。
重く苦しい、まるで自分の体じゃないみたいな感覚を味わう。
もしかしてここは死後の世界?などと夢物語のような考えが鈍い頭を横切った。

だって、酷く温かくて安心する。
なにかに満たされているような、そんな感じが頭の先からつま先にいたるまでまんべんなくある。

ふいに、視界が暗くなった。

驚いてさらに目を開く。
なぜって、俺は目を閉じてないから。

突然俺の目を覆ったそれは、低いながらも心地良い温度だった。
安心できるこの感触、これはなんだったっけ。



「……もうしばらく、眠っていてください。後少しで、ぜんぶ終わりますから」



懐かしく聞き慣れた、低く優しい声を耳が拾う。
はて、この手と声の持ち主は誰だっけ?
覚えがあるけど正確には思い出せず、俺はその声と手に安心しきってまた意識を失った。




牧神の午後気だるさの中の郷愁




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はい、おじさんかわいいー!

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