□乙男、告白
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いつも通り、王牙学園の廊下で女の子たちに囲まれながら昼休みを消費してた。






そんな時、偶然すれ違った君に出会ったんだ。




01‐




あぁ、まったくどうしよう。今日はとてつもなく運が悪い。

そう思って、わたしは王牙学園の長い廊下を目的もなく彷徨っていた。


だって苦手な数学の宿題の提出日を間違えてしまったし、当てられた問題は全て不正解。
トイレで髪ゴムを便器の中に落としたし(安物の大量生産品だったので迷わず流した)。
今日やったプログラミングの小テストはケアレスミスを犯して、合格点に一点届かず。



さらに極めつけは弁当と財布を忘れたこと。



イコール、お昼はなしとなる。嫌すぎる。
わたしは成長期な上に、今日の午後は訓練がある。空腹のまま受けるとすごくキツイ。
いっそのこと一思いに殺してくれと思っちゃったりするわけだ。

以前友人が「ダイエット中なの!」と中学生にあるまじき発言をして、昼食を抜いて訓練を受けた時があった。

結果。

「これはなんの拷問ですか」

とうわ言のように繰り返し呟いて、ものすごい勢いで床とコンニチハした彼女は保健室へ担架で運ばれていった。

その時の彼女の顔は蒼白で、この世の終わりのような表情をしていた。
わたしはダイエットじゃないが彼女のようになりたくない。
なんていうか、女の子にあるまじき顔だった気がする。怖かった。さすがに引いた。

ちなみにダイエットは若いうちにはしちゃいけないらしい。
女性は身体の成長が安定するのはだいたい25歳前後。まぁ細かな個人差はあるが。
ダイエットは自分の25歳くらいの体重を目安としてやったほうがいい。
それ以前にダイエットをすると成長が止まったり、体力がつかなくなったり、リバウンド体質になりやすくなると聞いた。
なので中高生のダイエットは危険極まりないのだ。
中高生の時期は太りやすいのが当たり前。周りのみんなはちゃんと同じように太っている。
太るということは成長にもっとも必要なことだから、若いうちに太るのはべつに悪くない。
……ただし、太るのもちゃんと限度があると思うよ。
確実にダイエットをするならわたしは25歳以後にすることをオススメする。
あと、半年くらい続けているとリバウンドが少なくなるらしい。継続は力なりってね。

この忠告を無視してやりたいなら自己責任になるぞ、と後日彼女に言ったところ猛反省した。
以来彼女は規則正しい食生活と生活習慣のおかげで肌はピチピチ、体重も大幅な増減はなし。とても健康体になった。

と、彼女の話をしている場合じゃない。
いまは目の前に転がってきた問題を解決しなきゃ、わたしは彼女の二の舞だ。
あいにくその友人は今日に限って委員会に行ってしまったし……。
はぁ、おなかすいた……。
歩きながら、ため息をついた拍子にずれたメガネをかけなおす。



「ねぇ、そこの君」

「はい?」



後ろから声をかけられて、気だるく思いながらも返事をしながら振り向く。


するとわたしの後ろに、この学園きってのハンサム男が立っていた。


深緑の三つ編みと、二つ結び。
女の子顔負けの美貌。
それでも男の子なので高い背。
彼はいつもの勝気な顔を、少しだけ上気させて微笑んでいた。


どうしたんだろう?具合でも悪いのかな。
そう思って口を開こうとしたが、彼の方が早かった。



「ちょっと俺とお話しない?」

「へ、はい?」



思わず間抜けな声で返答した。

え?なんですか。
学園内でナンパですか色男め。
状況が飲み込めず混乱していると、間抜けな返事を肯定と受け取ったのか、彼が嬉しそうにわたしの腕を引っ張る。



「え、ちょ、まって……」

「いいからいいから!」



いや、よくないんですが。
人の話を聞きなさいよ!

そう思いつつも、右手を引っ張る彼の走る速度が速くて言葉が続かない。
走る振動で上下に揺れ動くメガネを空いている左手で押さえつける。
とにかくなぜ彼……カルスくんがわたしの腕を引っ張るのか、その意図を汲み取ろうとしても無理。
だってわたしと彼にはちっとも接点らしい接点がないのだから。


@@@



ものすごい速さで巡る景色と苦しい呼吸のせいでじゃっかん酔い始めた頃、カルスくんが止まった。

いつの間にか旧校舎の隅の廊下までたどり着いたらしい。
そこは日の光さえ届かず、冷たかった。
全力疾走したので息が辛い。それにおなかも空いたのでその場にへたり込む。冷え切った廊下は、ほってた体を急速に冷やした。
カルスくんはというとへたり込んではいないけど、荒い息を整えていた。
ちょいちょいメガネを直しながら酸素を肺に取り込む。


しばらく廊下に息を整える音が響く。

うす暗い視界の中、さきに息が整ったカルスくんがわたしの目線に合うように、わたしの前に座り込んだ。



「ねぇ、緑川さん」

「な、に……?」



荒い呼吸の合間に返事をする。ていうか自己紹介したことないのになんでわたしの名前知ってんだ。
わたしの生返事でも、目の前のカルスくんは嬉しそうに目を細めた。
そんな彼を見て疑問符を浮かべるわたしに気づいたのか、カルスくんの口が回る。



「え、とね。いきなりごめん。俺、どうしてもキミと話がしたくてさ」

「……?」

「あのさ、俺、けっこう前のことなんだけど、さ、偶然廊下歩いてるキミとすれちがって、それで、」



早口で、どこかもどかしそうに喋るカルスくんは、必死になにかを伝えようとしているようだった。
慌てていて大げさに身振り手振りする彼はいつも大量の女子に囲まれているカルスくんじゃなかった。
なんだか学園の人気者とか、有名人とかじゃなくて、どこにでもいる少年のような。

わたしがカルスくんについての認識を改めていると、彼の口からとんでもない言葉が飛び出してきた。



「それで、ね、キミに、ひ、一目惚れしちゃったみたいでね、俺、キミのことが、好き、なんだ!」



途切れ途切れに、突っかかりながら、思いを告げられた。








なんだ、と……?まさかの告白






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全体的にダイエットの話しかしてないwww


5/23ちょっと修正.

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