Novel1

□機械の恋
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口を開きかけた瞬間、
先に言葉を発したのは静雄だった。

「それにしても、主人だって言うのに無責任だな」

サイケは動きを止めた。
静雄は煙草を指に挟みながら、尚も言葉を紡ぐ。

「自分のためなら他人は顧みねぇし、意味の解らねぇことばっかり言いやがるし、とにかく」


「だまれ!!」


サイケは叫んだ。
突然のことに目を見張る静雄へ、ひたすらに言い放つ。

「たしかにときどき、自分中心なところもあるけど、
うまく歌えたらほめてくれるし、笑ってくれる!
優しいところもいっぱいあるし、
おれがうまくく歌えかったときも、いっしょに練習してくれた!」

涙が浮かび始めた。
ただひたすら、マスターを侮辱された事に腹が立った一心で、叫び続けた。

「それに、マスターは静雄さんのことが…っ」

静雄さんのことが。


「…好き、なんだよ…っ」


言って良かったのかな。
駄目だったんなら、ごめんなさい。
…でも、やっと解ったよ。
俺は、マスターが居なきゃ駄目だって…。


「…は?」

信じられない、と言いたげな声が静雄の唇を転がり落ちる。

サイケは、俯いて言った。
でなきゃ、自分の気持ちまでも口に出してしまいそうだったから。

「マスターに、もう少しやさしくしてあげてください…」

マスター、ごめんなさい。
俺にしてあげられるのは、これくらいしか無いよ。

咽び泣くサイケの頭を、静雄の骨ばった手が無造作に撫でた。
優しくて、抱きつきたくなった。


「ごめんな」


小さく、首を横に振った。






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