Novel1

□※上書き保存。
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静雄の家。
二人は何時ものように深いキスを繰り返していた。

恋人同士、と言う関係になって1年程が経つだろう。
いつから、なんて憶えては無いけれど。
喧嘩は今でもするし、その力が付き合っているからと言って弱まることも無い。
だが、彼らの旧友曰く、殺し合いの空気は無くなったらしい。


「はぁ…は…」

「息切れてんじゃねぇか」

静雄は笑って、口角から伝っている涎を拭いてやった。
臨也は唇を尖らせ、肩で息をするのを隠すこともなく反論する。

「シズちゃんがキス長いからだよ、息する隙も無いし!」

キスの度に呼吸困難に陥りそうになる臨也を知ってか知らずか、静雄は笑う。
臨也は始め不貞腐れたように頬を膨らませていたものの、その表情は笑みに変わった。


静雄は、今日こそは、と決めていた。
もう付き合って1年なのだ。
肉体的な関係に落ちても、おかしくは無い、はず。

静雄は、臨也の手首を掴んだ。
疑問符を浮かべる臨也を、腰を下ろしていたベッドへゆっくりと押し倒す。
びくり、と肩を震わせた臨也へ、静雄は頭上から言った。
いつになく、真剣な面持ちで。


「臨也が欲しい」


「――っ」

…臨也の反応は、予想に反したものだった。
明らかに怯えたような表情。
僅かに震えた唇を噛み締め、直ぐに口を開いた。

「やだ」

完全否定。正にそれ。
静雄は、臨也の様子を気にしながら、尋ねた。

「どうして」

「嫌な物は嫌なんだよ。日本語も解らないの?」

「あ?テメエがビクビクしてるから訊いてやってるんだろ」

内容に関わらず、二人の会話は段々と喧嘩腰になっていく。
ただ、臨也の表情は怯えを映し出しているのは確かで。

まだ行為に及んだことが無い?
いや、以前、両性とも経験済みらしいことを言っていた気がする。
それに、少なくとも臨也は綺麗な容姿をしている。彼を放っておかない人間も少なくは無かっただろう。
じゃあ、なんで。


「とにかく、手離してよ。
シズちゃんとヤるとか、無理。」


「他の奴は良くても、か?」


静雄の冷たいほどの声に、臨也は異変を覚えた。
静雄を見ると、言い表せないほどの屈託したような表情が浮かんでいた。
完全に怯えに変わった雰囲気に気がつきながらも、
静雄は抑えられなかった。

他の奴は良くても、俺は駄目。
――付き合ってるのに?




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