Novel1

□Birthday Present
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そこで臨也は、棚の上に置いてあった油性マジックを手に取り、静雄へ振り返る。

「シズちゃん、誕生日いつ?」

「あ?1月28日…それがどうした」

「いや?」

聞いて直ぐにカレンダーへ向き直り、適当に相槌を打った臨也は、カレンダーを1月まで戻していく。
油性マジックのキャップを外すと、キュイキュイとインクの無くなりかけた音を響かせながらペンを走らせた。
静雄は嫌な予感に立ち上がり、臨也の頭上から手元を見た。

『シズちゃん誕生日』

整った字でご丁寧に四角い線から大きくはみ出して、そう記されていた。
油性マジックだった上、インクが無くなりかけで強くペンを押し付けたせいか、前月のページまで写っている。

怒りを覚えるよりも呆れを滲ませながらカレンダーを取り上げようとすると、
臨也は「待ってよ」と意地になったように静雄の手を避けると、5月まで捲っていった。

「今年はもう過ぎちゃったんだよね…」

ぽつりと呟きながらも、臨也は4日の枠に再びマジックを走らせた。
静雄は臨也の行為に、溜め息を吐く。

「ノミ蟲の誕生日なんか知ってどうするんだよ…」

5月4日。
『折原臨也誕生日』

丁寧にフルネームで書いた臨也は満足げに頷くと、キャップを閉めながら背後の静雄へ振り返った。

「俺の誕生日は喧嘩吹っ掛けて来ないでね」

やけに楽しそうにそう言い、カレンダーを元の日付に戻した。
静雄は未だに訝しげな目で臨也を睨みつけている。
それを見て、臨也はわざとらしく溜め息を吐いて静雄を見上げた。

「あのさぁ、折角何人かの誕生日書くんなら、多いほうが良いに決まってるでしょ。
そんな寂しく数個書かれてもね〜…
しかも家族が大半だよ?友達少ない人みたいだよ」

嫌味としか取れない口振りで臨也は言ってのけ、今にもぶちギレそうな静雄を通り越しソファに戻ろうと歩んだ。



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