Novel1
□微睡みユートピア
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静雄は一瞬驚いたような顔をするも、臨也を跳ね除けることは無い。
のしかかった重みに、静雄は呆れたような声で言う。
「寝るなら転がって寝た方が楽だろ」
「嫌だよ、精液でべったべたのシーツなんか」
「シーツ替えればいいだろ」
「…起きてからでいいじゃん」
臨也は、意地でも静雄の背から頭を離さない。
微かに汗の匂いが鼻を擽り、瞼を伏せた。
静雄は動き出しはしないものの、納得と取れる返事も返ってこない。
「ねぇ、シズちゃん」
微睡みを交えながら、臨也は囁くような声で恋人を呼ぶ。
静雄は対照的に、何処か落ち着かない声で「あ?」と返した。
――今なら、眠気でぼんやりとしている、という理由で片付けられないだろうか。
臨也は瞼を閉じたまま、額を静雄の広い背に付け温度を共有しながら、
寝ぼけているような声音で、態度で、それでも高鳴っている胸で問い掛けた。
「俺が寄っ掛かるの、嫌?」
「…っ別に…」
一瞬詰まった声。
額から伝わる熱が、心なしか上がった気がする。
その温度が妙に愛しくて、臨也は更に身体を寄せた。
「ねぇ、本当に、嫌じゃない?」
安心し、段々と本物の微睡みに呑まれていく。
自然と緩んでいく頬は、落ち着いた表情に笑みを差し入れた。
「嫌じゃねぇけど…」
戸惑ったような声音が静雄から響いたが、臨也は「うん」と、鼻にかかった声を返しただけ。
微睡みに沈められていく意識の中、
臨也は甘い声で、微睡みに包まれて囁く。
「シズちゃん…すき」
その後直ぐに、静雄の背からは安らかな寝息が響きだした。
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