Novel1

□微睡みユートピア
1ページ/4ページ



臨也は、熱っぽい息を吐き出す。
快楽を放ったばかりの自身を引き抜く静雄を横目に見ながら、
臨也は沈んだベッドからゆっくりと起き上がった。

部屋には精液の微かな匂いが充満している。
自分の精液でべたつく腹部をシーツで拭きながら、心地よい疲労感を満喫した。
静雄はと言えば、慣れた手つきでコンドームを外し捨てると、今までの行為に区切りをつける。
そして、一服しようと傍に掛けてある服のポケットを探り、煙草とライターを取り出した。

臨也としてはまだ余韻に浸っていたいのだが、静雄は今までのムードを捨て去り、煙草を蒸かし始めた。
このまま放っておくと、煙草を吸い終わったら臨也などそっちのけで帰ってしまうだろう。


まるで、彼の性欲を満たすためだけに自分が存在しているような気がしてしまう。

仮にも、恋人同士という関係。
そこには確かに自惚れでは無い愛があったはず。
なのに、性欲処理の道具なんて、
そんなの嫌だ。寂しい。


簡単に我が侭を言える性分なら良かったのに、妙に高いプライドがそうさせてはくれない。
臨也は、甘えたな心を前面に出すことは出来ずに、
精一杯の我が侭を、平静を装って紡ぐ。


「シズちゃん、眠い」

そう言って、静雄の背に寄りかかった。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ