Novel1
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とぼとぼ。
そんな効果音が似合いすぎる速度で、臨也は池袋の街を歩いていた。
空は既に濃紺色に染まり、片手で数える程度の星が瞬いている。
不本意で仕方ないのだが、玩具で弄ばれた下半身は、熱を持て余してずっと半勃ちの状態だった。
コートが長めでよかった。
家に帰ったら早速自慰に走りそうな自分に嫌悪しながら、歩を進めた。
その時。
「いぃぃざぁやぁぁ!!」
突然、聞き慣れた声が背後から響いた。
振り返ると、視界にコンビニのゴミ箱が映る。
反射的に避けると、ペットボトルと書かれたゴミ箱は地面に叩き付けられ激しく変形する。しかしそれでも尚勢いを殺せずにアスファルトを滑った。
こんなものを投げてくるのはたった一人。
臨也は苦笑いを浮かべて、此方に向かってくる金髪でバーテン服の彼を見た。
「シズちゃん…」
鬼のような形相をして此方に歩いてきた静雄。
低く唸るような声で威嚇する。
「池袋には来るなって言ってるだろ…!」
今一番会いたくなかった奴に会ってしまった。
今の状況で喧嘩をしても勝てる気がしないし、逃げられる気もしない。
こんな状態なのがバレれば、何を言われるか解ったものじゃない。
「今から直ぐに家に帰るからさ、見逃してよ。
それに、今日はやる気が無いから」
早く逃げよう。
早く、早く帰りたい。
臨也の言葉に、静雄は「あ゛ぁ?」と声を上げる。
こいつに言葉は通じないか、そう思った。
しかし、静雄の顔から怒りの表情がふと消えた。
突然のことに表示抜けした臨也へ、静雄は口を開いた。
「ノミ蟲、顔紅くないか?」
「え…?あ、風邪ひいた、かも」
臨也は咄嗟に嘘を吐いた。
勿論、実際は風邪など引いていない。
帝人の家で一々鏡で顔を見る暇があったはずも無く、上気した頬は赤みを残していた。
すると、静雄は臨也に歩み寄った。
バレるのでは、という緊張に、胸がどきりと警鐘を鳴らす。
しかし、跡退ろうとした臨也に気付かず、静雄は心配そうな表情を浮かべて、臨也の額に手を当てた。
「熱は無いみた――」
「っや!」
只でさえ敏感になっている最中触れられ、思わず静雄の手を払いのけた。
すると、静雄の手が臨也の手首を掴み返した。
あ、キレるかも。
そう思い、弁解を図ろうと静雄を見上げた。
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