Novel1

□※MELT!
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「ちょっとトイレ行ってくる」

静雄の家にお邪魔している臨也はそう言って、直ぐ隣で新しく煙草を吸おうとしている静雄から離れた。


外では喧嘩ばかり――
そんな臨也と静雄は、他人から見れば犬猿の仲。

でも、実は心の奥までそうという訳ではなく…
確かに、気は合わない。
臨也が少し挑発すれば直ぐに喧嘩になるし、
その攻撃にも両者とも容赦が無い。
でも、何かが噛み合った。

そうして何時からか、こうしてどちらかの家に時々遊びに来るようになった。

大した話をする訳ではない。
もしかしたら、だからこそ楽なのかもしれない。
無駄な気遣いをしなくてもいい。
気分で媚びる必要も無い。



臨也がそんなことを考えながら、トイレまで歩いてきた時。

ふと、後ろに気配を感じて、振り返った。

「シズちゃん、何でいるの?シズちゃんもトイレ?」

「あぁ」

静雄の行動を不審に思いながらも、「なんだ、そういうことか」と納得する。
だったら、リビングで待っていればいいのに。

トイレの扉を開き、妙に近くに居る静雄を再び不審に思う。
このまま臨也が扉を閉めれば、間違いなく静雄にぶつかるだろう。扉が破壊されかねない。
わざとなのか、はたまた偶然なのか。
眉を顰めながら、臨也は静雄を不信感を込めた瞳で見た。

「ちょっと、シズちゃん…近い、ドアぶつかるよ?」

「あ?手前が中入れば良いだけだろ」

「はぁ?俺がトイレ入っても変わらな…っ!?」

変わらない、そう言おうとした時だった。
静雄に無理矢理押され、よろけ、蓋の閉まった便器に尻餅をついた。
その隙に静雄がトイレに入り、扉を閉めた。

広くは無いトイレに、二人。
両方男となれば、尚更狭苦しく感じる。



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