Novel1

□Sweet Sigar
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「手前も吸うか?」

唐突な静雄の言葉に、臨也はきょとん、とした。
静雄は、何固まっているんだ、と言いたげな表情を浮かばせながら、胸ポケットに入っている煙草を取り出した。

「美味いか不味いかなんて、手前が確かめろよ。
ノミ蟲の早死にの願いもかけてやる」

静雄の指先に取られた煙草。
臨也は些か悩んだものの、首を横に振った。
そして、わざとらしく顔を歪ませる。

「煙草吸ったら馬鹿になりそう、シズちゃんみたいに」

嫌味にしか聞こえない言葉に、静雄は殴りかかりたくなる。
が、臨也は続けて口を開いた。

「俺は、死ぬのは怖いからね。
だから、わざわざ死に急ぐ真似はしない。
俺に有益とも思えないしね」

思いの外きちんとした意見に、静雄は少し考える。
確かに、間違いなく当たっているのだから。
しかし、静雄にとっては、煙草は確かに落ち着けるものなため、そんなことを考える以前に吸ってしまう。

「ま、でも、知らないことは知ってみたから、何れ興味本位で吸ってみないとも限らないけどね」

苦笑したように紡いだ言葉に、静雄はコイツらしい、と感じた。


そして、妙な好奇心。


静雄は、煙草の煙を深く吸った。
口から温まった煙が肺に満ちていく感覚を覚えながら、唇から煙草を離した。

「臨也」

そして、
此方を見た臨也の唇を奪った。

驚いた顔をして硬直した臨也を気にすることもなく、
静雄は吸い込んだ煙を、ゆっくりと臨也の口内に送り込んだ。
重なった唇の端から、吐き出されて漏れた煙が、白濁した色を残しながら空へ上って空気に紛れる。

臨也の喉から空気が押し寄せるのを感じて、静雄は唇を離した。
すると、予想通り、臨也は大きく咽た。
送り込んだ煙を全て吐き出すように激しく咳込み、涙目になる臨也。
静雄は何となく優位に立った気がして、馬鹿にするように笑った。



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