Novel1

□Sweet Sigar
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「煙草って、美味しいの?」

唐突に、臨也に問い掛けられた。
静雄は、愚問な問い掛けに、不機嫌に唸った。

「別に」

素っ気無い返事に、臨也は「理由は無いの?」と、
新しい物をやたらと知りたがる子供のように尋ねた。



来神高校の屋上。
静雄はいつもの、授業のサボり。
臨也も同じようにサボるために、校内をふらりとしてから、屋上へ来た。
そこでは、先客の静雄が、煙草をふかしていた。


「理由?」

静雄の復唱に、臨也は隣で頷いて見せる。

静雄にとっても、これ、と言った大きな理由は無い。
美味しいと感じるかと言われれば、それなり。
精神安定になっているか、と言われても、それなり。
感覚的に、あると落ち着くような気がする、それだけ。

「落ち着くんだよ」

静雄の声に、臨也は思案しながら「へぇ」と軽く返事をした。
そして、妙に楽しげに、静雄に尋ねる。

「未成年の喫煙は補導だよ?」

臨也の突っ込みに、静雄は反論のしどころがなく、
臨也を睨み付けたものの、唇は動き出さずに煙草のフィルターを噛んだ。

「体にも悪いし、シズちゃん早死にするんじゃない?
俺にしてみたら好都合だけど」

「手前…」

静雄は唸るようにそう呟く。
怒気を含んだ声に、臨也は歪んだ笑みを浮かばせながら、
「煙草止めないでね」
と嫌味ったらしく言ってやった。



臨也としては、静雄ははっきりとした存在だった。
喧嘩はする。
子供や老人が巻き込まれてしまえば、間違いなく死んでしまうような、最早殺し合いのような喧嘩。
でも、心の底から嫌いか、と訊かれれば、案外そうでも無かったり。
感覚としては、リアルな格闘ゲームでもしている気分。
静雄がどう思っているか、は知らないけれど。




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