Novel1

□万有引力の法則
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「宇宙にある全ての物にかかる、引き合う力。
――じゃあ、人間同士には、引力ってあるのかな?」


「はぁ?」

またわけの解らないことを、そう言いたげな静雄へ、臨也は再び口を開いた。
楽しげに、楽しげに。

「類は友を呼ぶ、って言うでしょ。
本当だとしたら、正に引力だと思わない?」

出鱈目な哲学者じみたことを言い、臨也は一人納得する。

「だから自分が引き合わせた以外の人間には興味が無いんだ」

「…なんの話だ」

静雄の苛立った、今にも直ぐ近くに止められた張り紙だらけの違法駐車の自転車を放り投げてきそうな声に、
臨也は「怖い怖い」などと軽くあしらいながら、本題にたどり着く。


「じゃあ、俺とシズちゃんは何なんだろうね?」

「人と人とを引き合わせる引力があって、引き合った者にしか興味が出ないなら、
俺たちは引き合ったってことだよ?
しかも、こんな都会のジャングルで毎度会えるほどにね」


実際、そんなのを考えると気持ち悪いけど。

静雄は、目をキョトンとさせていた。
何だか面白おかしくなって、臨也は構えを解くと、前へ踏み出す。

「どうなんだろうね、宇宙の全てが引き合う力って」

一向に攻撃すら仕掛けてこない静雄。
臨也は、静雄の直ぐ前まで歩んだ。
ぴたり、と止まると、視線が重なる。
ニヤリ、と臨也は口許を歪ませると、踵を上げた。

「こういうことかな?」


悪戯半分。半分は好奇心。
臨也は、静雄の唇へ、背伸びしてその唇を重ねた。

直ぐに離した唇。
静雄は顔を顰める。

「何考えてるんだテメェは…」

「やだな、例えば、だよ」

臨也の馬鹿にしたような口調にカッとなった静雄は、殴りかかろうと腕を振り上げた。

しかし、臨也はそれを交わすように、再び唇を重ねた。
静雄の頭を捕らえ、引き寄せて。



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