Novel1

□万有引力の法則
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そんな時だった。
メリ、とひび割れるような音を聞いた気がして、反射的に動いた。

直後、地面に埋まっていたであろうポールが、臨也のいた場所へ、上下逆さまにめり込んだ。

「うっわぁ」

こんなものを投げてくるのは、アイツしかいない。

飛んできた方向を見ると、やはり、バーテン服を纏った青年がいた。

鬼のような形相で、外したサングラスを胸ポケットへ突っ込んで歩いてくる。

「池袋には来るなって言ったよなぁ?臨也くんよぉ」

唸るような低い声が、そう告げる。
はは、と臨也は軽く笑いながら、袖からナイフを出し、路地裏へ滑り込んだ。
後ろから浴びせられる怒声を無視して走り、人のいない寂れた公園に出た。

ナイフを構えると、追いかけてきた静雄も数メートルの距離を残して足を止める。

「どうして池袋に来るとシズちゃんに会っちゃうんだろうね?」

「俺が知るか」

怒りに紡がれた声が、臨也へ今にも襲いかかろうとしている。

…ふと、臨也は思い出した。
直感的な思考で、静雄に問い掛ける。


「シズちゃんは、万有引力ってなんだと思う?」


「は?」

静雄は、臨也の繋がりの無い会話内容に理解が出来なかったものの、
馬鹿にされた気がして返した。

「万物が引き合う力だろ。
馬鹿にしてるのか手前は」

「シズちゃんでも解るんだ。
成長するんだね、単細胞も」

「テメエ臨也…!」

イライラした口調。
ギリ、と歯軋りが此方まで聞こえてきた気がした。
マズい、と思い、早々に臨也は切り出す。



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