Novel1

□万有引力の法則
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ばんゆういんりょく【万有引力】

宇宙にあるあらゆるものが互いに引き合っている力。


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臨也は、毎度のように池袋へ来ている。
今日は大した用も無く、暇を持て余していた。
そんな理由で、池袋まで人間観察に来た。

ただ、町を行き交う人の波を見ているだけで楽しい。

腕時計を確認しながら足早に歩いていくサラリーマン。
決まった行き先も無く数人で喋っている女子高生。
集団でナンパしている青年。
屯して携帯を弄っている中学生。

個々に表情があり、全て同じとは限らない。
…だが、全てがそれが当たり前だと思っている。
ああ、なんて滑稽。
いつ崩れるか解らないものを当たり前だなんて、馬鹿馬鹿しい。

臨也は、誰に干渉されることも無くクスクスと笑った。
勿論、そんな彼を見て何かしらの感情を抱く人間は、誰一人としていない。
知る必要も無い誰かに、感情を向けるのはメンドクサイのだ。

「それなのに、仲間は欲しがる」

まるで引力みたいだ。
矛盾だらけな、馬鹿みたいな。

だから人間は面白い。
故に愛しい。




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