Novel1

□大嫌い!
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懐かしい。
そのときは特に興味は無かったのだが、一応、そういう考え方もあるのだ、と記憶に残っていたらしい。


俺は、シズちゃんが大嫌いだ。
嫌いじゃ、何か物足りない。


じゃあ、この『大嫌い』は何なのだろう。

誰かの同意が欲しいから?
自分を主張したいから?
実はよく見ているから?

同意が欲しいなどとは思わない。
主張する気もない。
シズちゃんをよく見られるのなんか、喧嘩をしている時くらい。
殺り合わずにシズちゃんをじっと見つめられたためしがない。

じゃあ、これは何?



「ノミ蟲!よそ見するな!」

静雄の喝がとぶ。
臨也は、それには答えない。


「シズちゃんは、大嫌いってなんだと思う?」


「…は?」

突然問い掛けた臨也に、静雄は嫌悪の目を向ける。
看板とナイフが、カキン、と金属音を響かせた。

「新羅曰く、大嫌いの裏返しは大好きなんだってさ」

俺が、
好き?
シズちゃんを?

「だから何だよ」

「大嫌いは、大好きに通じてるってことじゃない?」

他人事で臨也は言い切る。
当時の臨也と同じように、静雄は理解できていない表情を浮かべた。

未だ緩まりもしない喧嘩の中、二人は言葉を交わし続ける。

「シズちゃんは、何で俺のこと大嫌いなのかな、って」

臨也の言葉に、静雄は眉根を寄せて言う。

「手前が近くに居るとイライラするんだよ!無条件に!
落ち着かねぇし!」

静雄の言葉に、臨也は目を丸くした。



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