Novel1

□※戦争コンビの恋人ごっこ
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「なんで扉閉めちゃうの?」

「手前がすぐ逃げられないように、だ」

ばたん、と音が響き、密室になった。
臨也は、楽器を投げられる可能性の高い状況に緊張しながら、ふざけた口調で静雄に言う。

「密室とか、何がしたいのさ、シズちゃん?」

すると、静雄はニヤリ、と笑った。
少しずつ近付く静雄に合わせて後退ると、壁に背が当たった。
距離だけが縮まり、追い詰められていく。
ナイフを構えた臨也へ、静雄は笑ったまま言った。

「お前も期待してたんだろ?」

「は?何――」

不意に一気に距離が縮まる。
手を軽く捻られナイフを落とされた。

耳元で静雄の手が壁に付く音が響き、視界が仄暗くなる。

唇に触れた感触に、
久々だな
と、臨也は思った。

クチュ、という水音。
生暖かい舌の感触が口内を這いずり回る。
舌を吸われ、脳味噌が溶けていくような感覚が走った。

「ふ…ん、ぅ……はぁっ」

唇が離れ、大きく息を吐いた臨也。
静雄は息を荒くした臨也を馬鹿にしたように笑う。

「初めてしたような反応しやがって」

「何さ、シズちゃんこそ性欲も程々にしたら?」

臨也はそう言って、噛み付くように静雄の唇を奪った。
身長差から、臨也は背伸びの上、静雄の胸倉を掴んで引き寄せなければ唇が上手く重ならない。
そんな臨也を引き寄せ、静雄は唇の形を確かめるかのように、背伸びをする臨也の顎を捕らえ、幾度も唇を重ねた。

隣の教室から、リコーダーの音がし始める。
静雄はキスを止め、足がぷるぷるとしてきている臨也の顔を見た。
ふらつきながらも床に踵をつけた臨也は、嫌味ったらしく吐き捨てた。

「力と体格と性欲だけ成長して…頭は幼稚園児なのにね」

「頭しか成長してない手前が言うな」

互いに貶しあいながらも、行為は止まらない。


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