Novel1
□※戦争コンビの恋人ごっこ
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静雄と臨也は、高校から知り合いだ。
と言っても、喧嘩しかしていない。
喧嘩するほど仲がいい…とは言うが、
戦争コンビの異名がつくほど、
彼らはそれを通り越した喧嘩仲だった。
…そう、二人をよく知らない人なら言うだろう。
***
次の授業を終えればお昼休み。
休み時間も残り少なくなった頃。
「シーズちゃんっ」
臨也は、いつものように、常備品のナイフを振り上げ――
サクリ、と静雄の背に突き刺した。
「痛っ」
「刺したのにその程度の反応?本当に人間?」
ナイフを引き抜いて、切っ先についた血を鬱陶しそうに舐め取る臨也。
静雄は、殺気を振り撒きながらゆっくりと振り返った。
「いーざーやーくーん?」
「こわーい」
静雄の怒りを露にした声が響くが、臨也はふざけてそう言うと、直ぐ隣にあった机をずらし通路を塞ぎ、教室を走り抜けた。
「待てノミ蟲イイィ!!」
静雄は、その机を蹴倒すと、臨也を追いかけて教室を出た。
「臨也も静雄も授業…」
門田の呆れたような声は二人に届くはずも無く。
隣にいた新羅は、コロコロと笑う。
「二人きりになりたかったんじゃない?」
***
「待ちやがれ臨也アアァ!」
「待てって言われて待つ人なんかいないよ」
二人は、授業開始のチャイムが鳴り響く中、授業の行われている音楽室の前を走り抜けた。
「残念だったなノミ蟲!突き当たりだ!」
臨也は、廊下の突き当たりで一度立ち止まる。
追いかけてきた静雄は、殴りかかろうと拳をつく。
が、臨也はそれを軽々と避け、
直ぐ隣の音楽準備室へ飛び込んだ。
壁に拳がめり込む音。
臨也は扉を閉めようとしたが、それは静雄の手で止められる。
「…なんで止めちゃうのさ」
「簡単に逃げられると思うなよ?」
静雄は不敵な笑みを漏らしながら、扉を力任せに開いた。
臨也は後退る。
教室内に入った静雄は、扉を閉めた。
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