Novel1

□偽善者と偽悪者のオペレッタ
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隣に並んだ帝人は、何か会話をしようと問いかける。

「臨也さんは帰らなくていいんですか?」

「急ぐ用も無いからね」

「静雄さんに見つかったら、何か言われませんか?」

「別に平気だよ。
帝人君に心配されるなんて癪に障るな」

「…すみません」

会話が何かしらで切れてしまう。
一緒に歩いているのに何も喋らないのも何だか落ち着かないため会話を続けたいのだが、
臨也が会話を一々断ち切るような受け答えをするため話が続かない。
会話を諦めて、帝人は黙々と歩き出す。


と、不意に臨也が口を開いた。

「帝人君ってさ」

「はい?」

嘲りを交えたような表情が帝人を見た。
先刻までニコニコしていたから、無表情からこの表情を突然されるよりも、何だか緊張してしまう。

「正臣君の反応を見て、俺のこと悪い奴、って感じながら、
でも本当はいい人なんじゃ、とか、思ってるでしょ」

ひゅう、と風が音を立てて髪を揺らした。
はたと立ち止まった臨也に、帝人も足を止める。
帝人は、「え」と困惑したような声を漏らし、
それを隠せないまま薄ら笑いを浮かべ、答えた。

「でも、何だかんだで臨也さんは助けてくれることもあるし…
やっぱ、悪ぶってることもあるけど、根は優しいんじゃ――」


「は…ハハッアッハハハハハ!」


突然、臨也は壊れた玩具のように笑い出した。
状況が飲めずに目を丸くした帝人を気にする様子も無く、ただ、笑う。

「臨也、さん?」

困った声で問いかけた帝人に、臨也は笑うのを止める。

「ははっ…
勘違いも甚だしいよね、帝人君」

空気が変わった、と肌で感じた。
冷徹な瞳が突き刺さる。


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