Novel1
□偽善者と偽悪者のオペレッタ
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一瞬の無言。
いや、一瞬と言うには長いような。
信じられない物を見るような目つきで臨也を凝視した帝人に、臨也は口をあけて笑った。
「あははは!嘘だよ。
たまたま見つけたから声を掛けただけ」
「…そうですか」
どこかホッとしたような口振りで言った帝人に、臨也の笑顔が引きつる。
「帝人君は俺に会いたくなかったのかな?」
そんな対応をしていたと、その時やっと気がつく。
正臣があまり臨也と関わりたくなさそうなのを見てきているから、臨也のことが嫌いではなくても反射的に嫌そうな対応をしてしまったらしい。
「すみません、わざとじゃないんです」
「…それが一番タチが悪いよ」
天然なのか腹黒なのか判別し難い帝人に対し、
飾り立ててくる人間よりは幾分面白い、と臨也は思う。
「僕、帰る途中なので…」
既に夕暮れ時なため群青のに染まり始めた空を見て、、帝人はそう言って頭を下げる。
すると、臨也が口を開いた。
「一緒に帰らない?」
「…え」
思わずきょとんとした。
臨也は引く気は無いようで、帝人を通り越し、帝人の家の方向へ歩き出す。
「ほら、速く来ないとおいてっちゃうよ」
「え、あ、はいっ」
帝人は「臨也さんが先に行っても何の意味も無いんじゃ」と思いながら、臨也に走って追いついた。
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