Novel1

□※救われない恋の歌
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「…何言ってるの?
俺は人間が好きなのであって、あんな化け物のなり損ないみたいな奴、好きになるわけないだろ?」

臨也は僅かに震えた指でカップを握り締めて、罵るようにそう言った。
しかし新羅は、人を食ったような笑みを浮かべたまま。

「それだけ分かりやすい態度で、よくそんな嘘吐けるね。
誰にも気付かれないように苦心惨憺していたようだけど、鈍感な静雄と親目線な京平は騙せても、私まで騙せると思ってたのかい?」

「…何様のつもり?新羅のくせに…」

内心、焦っていた。
そう、こいつは妙なところで鋭かったりする。無邪気に笑いながら、核心を突いてくるのだ。
…そう、今だって。

「まぁ、臨也は静雄みたいに実力行使じゃないから、考えた末の対応なんだろう?
同性同士、喧嘩相手。叶わないのは分かっている」

まるで隠してきた事を全て抉られていくような言葉。
頭が痛くなる。吐き気がしてくる。

いい加減黙らせなければ、後に引けなくなる、そう直感的に思い、カップを机に置き、ナイフを取り出そうとした時だった。

――カクン、と腕の…否、体中の力が抜けて、ナイフが床に滑り落ちる。

一瞬状況が掴めなかった。
――目が合った新羅が笑っているのを見て、この闇医者の仕業だと瞬時に確信する。
しかし、そんなことが分かったところで、身体は臨也の意思に反して段々と力を無くしていく。

「新羅、お前、何して…」

「身体に害は無いよ?
ただの弛緩剤さ。頭は働いてるだろ?」

平然と言った新羅は、立ち上がる臨也に歩み寄り、ソファにぐったりと身体を預けた臨也を、床に引き摺り下ろす。
覆い被さるように臨也を上から見下ろした新羅は、やはり人を食ったような笑みを浮かべた。


「セルティには勝てるわけ無いけど、

僕とセックスしてみない?」


あまりに唐突過ぎる言葉に、臨也は声すら出ないままに新羅を見上げた。
何を言ってるんだ、こいつ。
そんな目で見てやれば、新羅は笑みを浮かべながら、臨也の白い頬を指で撫でた。
嫌悪を滲ませながら、臨也は低く唸る。

「どうして、新羅となんか…」


「静雄が、喧嘩相手の君なんか好きになると思ってるの?」


びくり、と肩が震えた。
それは自分もずっと考えていて、ずっと自分に言い聞かせていた言葉だから。
黙り込んだ臨也へ、新羅は優しげに笑いかける。


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