Novel1

□※救われない恋の歌
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「で、何の用なの?」

臨也は、出されたコーヒーを啜りながら、自分を呼び出した張本人である新羅に不機嫌に問い掛けた。


ほんの数時間前、突然新羅から電話が掛かってきた。
勿論この闇医者に世話になる事も多いが、関わったところで良いことがあるわけでもない。こっちから手を出したならまだしも、向こうから手を出してきた場合は尚更。
…というわけで、臨也は不機嫌を滲ませた声で電話に出た。

「もしもし…」

『もしもし、臨也?ちょっと話したいことがあるんだけど、今から僕の家に来てくれる?』

「は?何で――」

ぷつん。
電話が切れた音の後には、空しい音が延々と響くだけ。
イラ、としたものの、昔からの友人である上、静雄との喧嘩の怪我など、新羅に手当をしてもらっているわけだ。
安易に電話を無視して後々とやかく言われるのも好きじゃないし、不運な事に今日は何も予定は無い。
仕方なく、臨也は新羅の家に行くことにした。


――という訳で、今に至る。

「いや、まぁ、大したことじゃないんだけどね」

「…じゃあ、呼ばないでくれる?」

露骨に嫌な顔をした臨也を軽く笑った新羅は、セルティという最愛の妖精のポップなデザインがプリントされたカップを呷りコーヒーを飲み干すと、楽しそうな顔をして臨也に問い掛けた。



「臨也は静雄が好きなんだろ?」



唐突すぎる言葉に、臨也は固まった。


――新羅に言われたとおり。
臨也は静雄が好きだ。
それも、ずっと昔から。

…でも、喧嘩をして、嫌いなふりをして、悟られないようにしてきた。
今でも、隠し通そうという気持ちは揺らがない。
男が男を好き。それは普通じゃないのだ。
「気持ち悪い」と避けられるよりは、「大嫌い」と追いかけられる方が、幾分幸せなのだと思う。
だから、誰にも知られたりはしない、と決めていた。

…なのに、新羅はまるで確信でもあるかのように言い当ててきたのだ。


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