Novel1

□やきもちの恋
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臨也は、静雄の家で一人ちょこんと座っていた。

…と言うのも、臨也は久しぶりに静雄の家を訪れた。
他人にそんなことを言えば、誰もが信じないだろうが――

二人は、付き合っている。

勿論、嘘偽りはない事実だ。

二人は、高校時代からの知り合い。
臨也に至っては、高校2年の頃からずっと片想いを続けてきたわけだが、
恋人同士に値する関係になったのは、つい数ヵ月前。
静雄からの告白という、願っても見ない出来事により付き合うこととなった。


…そして、静雄の家に遊びに来た訳だが――


「恋人より先輩優先ってどういうこと!?」

――臨也は半ば苛立った声を上げていた。


つい先刻、臨也が静雄の家に訪れてほんの数分の頃、
突然、静雄の仕事の上司である田中トムから電話がかかってきた。

『もしもし…ハイ、…今から行きます、ハイ…』

ものの20秒足らずの会話。
その会話に、臨也は思わず『え』と声を漏らさざるを得なくなる。

電話を終えた静雄へ、臨也は思わず問い掛けた。

『行くって…何処に?』

静雄は申し訳なさそうな顔をするわけでもなく、
携帯を閉じながら真顔で言う。

『トムさんが、渡したいものが有るって言うから、ちょっと出てくる』

『…え、あ、うん……』

そんな風に言われれば、臨也は了承の返事をするしかない。
此処で、行くなよ、と歯向かっても、怒らせて面倒になるか、知るかよ、と無視されるだけだろう。
それなら、素直に行かせるのが楽だと思い、そのまま送り出した。


…でも、静雄が出て行って5分。
臨也は既に、素直に行かせたことを後悔していた。

別に、一人で静雄の家に取り残されるのが嫌なわけではない。
良い訳でもなく…否、どちらかと言えば嫌なのだが、
別に、煙草やらビールやらを買いに行くから、と留守を任されることくらい、どうという事はない。


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