Novel1

□落愛
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「ドタチーン」

明るい楽しそうな声に、静雄はピクリと肩を揺らす。
端目に見やった視線の先には、その明るい声の主の呼ぶ、門田がいた。
門田は、その声の主の臨也へ視線を向けると、飛びついて来た彼を受け止める。

「何だ、臨也」

「ん、触りたくなっただけだよ?」

やはり明るい声でそう言った臨也は、爪先立ちをしながら、自分より高身長の門田に、人目も憚らず、ぎゅ、と抱きついた。



「本当に仲良しだよね、あの2人って」

静雄は、隣でそう言った新羅へ視線を向ける。
返事はせずに、眉を顰めたままの静雄を見た新羅は、無邪気な笑顔を浮かべて見せた。

「どうしたの?静雄。
京平が臨也と仲が良いのが気に食わない?」

――あながち間違ってはいない言葉に、静雄は無意識に殺気を放っていたらしい。
無駄な事は言わない方が良い、と今までの経験で十分学んでいる新羅は、口を噤んだ。


臨也、静雄、門田、新羅は、高校で一緒になった。
個々では既に面識があったりもしたのだが、
臨也と静雄は、元々共通の友人であった新羅によって知り合った。
第一印象は最悪。
その日から毎日のように喧嘩をしては、2人ともボロボロになって、一応にも医者の息子である新羅に手当をしてもらっている。

…というわけで、臨也と静雄は喧嘩相手でありながらも、
静雄と門田という友人のお陰で、何だかんだ一緒にいるのだ。



「そんな難しい顔するくらいなら、あっちに乗り込んで行けばいいのに」

「…うるせぇな」

此方には此方の事情があるんだよ。
小さく呟いて、見たくも無い楽しげな空気から、視線を逸らした。



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