Novel1
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それはきっと、否、間違いなく朗報だったのだけれど。
俺には、悲報だったのかもしれない。
「シズちゃん、俺、眼の移植することが決まったんだ」
臨也の病室に訪れて、最初の言葉。
嬉しそうに紡がれた声に、静雄も思わず喜びに沸き立った。
「良かったじゃねぇか、見えるようになるんだろ?」
「うん、神経の繋ぎ合わせが上手くいけば、間違いないって」
今まで聞いた声の中でも特に嬉しそうな声に、静雄も自然と嬉しくなる。
好きな奴が、正常な身体に戻ることが嬉しいのは当たり前。
視覚があるのと無いのとでは、生活だって幾分違うだろう。
そう、これは心から嬉しいことで――
「これで、シズちゃんを見ることが出来るよ」
――嬉しいこと、で。
臨也と会うようになってから、3週間。
期限付きで付き合い始めて、2週間。
…未だに、自分が臨也を傷つけた犯人だと、言えないでいた。
臨也の視力が戻ることは嬉しい。
しかし、素直に喜べないのは、臨也に姿が見られるという事実がついて回るから。
いくら顔は見ていなかったとしても、これだけ鋭い奴に必ずしもばれないなんていう保証は無い。
況してや、病室が解らなくて行き着いた、なんて、わざとらしいことこの上無いのだ。
好きな奴に、期限つきといえど告白された。
だからと言って、浮かれていい立場ではないことを、改めて思い知らされる。
「どうしたの、シズちゃん、黙り込んで」
「え?ああ…何もねぇ」
臨也の不思議そうな声に、静雄は誤魔化すようにそう答える。
臨也は首を傾げながらも、いつもの下らないような話を始めた。
退院するまで。
でも今の打ち明けないままでは、臨也が退院するまでではなく、視力を取り戻す前に別れなければいけなくなる。
…否、打ち明けたとしても、臨也が静雄をはね除ければ、それで終わるのだ。
どちらにしろ、時間と共に別れなければならない。
…でも――。
「畜生…」
***