Novel1

□RAINY DAY
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今にも泣き出しそうな空模様。
濡れるのは嫌だな、そう思いながら池袋を歩く臨也は、
仕事が終わり、新宿の家への帰路についていた。

今日は、つまらない。
仕事は上々、いつも通り。
悪いこともなかったし、だからと言って良いことも無かったけれど。
…正直、理由は判っている。

アイツに、
全く思い通りにならないあの生き物に、会っていないから。

いつもは、何処にいても見つけに来るくせに。
いつもは、鬱陶しいくらいに追い掛けてくるくせに。
今日は、来ない。見ない。

街に出て無いとか?
いや、今日は平日だから、少なくとも仕事に出てるはず。
俺が来てること、分かってない?
いや、毎回、シズちゃんに池袋にいると知られるようなことはしていない。

何となく、もの寂しい。



ぽつり。
頬に、冷たい感触を感じ、同時にアスファルトに黒い模様が生まれ始める。
見上げれば、落ちてくる雫。

「雨……」

とうとう降りだしてしまった。
雨は、瞬く間にアスファルトを黒に染め上げ、
臨也の黒すら、更に深いものにする。
世界の全てが灰色を宿したような重たい空気。

その灰色を塗り替えるように傘の花が咲く中、臨也は僅かに歩を速める。
速く電車に乗ろう。
まだこの時間は人が少ないから、雨に濡れていようとさして迷惑にはならないだろう。

あと数百メートルで駅。
そんな時だった。


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