Novel1
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「…臨也、?」
「シズちゃん?」
静雄の声に、臨也は嬉しそうな声を上げた。
臨也に面会に来た日から、静雄は臨也の病室に毎日訪れている。
毎回、会話は喧嘩腰になりながらも、それは動物の噛みつき合うじゃれあいのような物。
ただひたすらにたわいない話をして、会話が途切れれば帰る、と言うのが、静雄の日課になっていた。
もう、そんな関係が1週間になろうとしている。
「シズちゃんも暇だね、毎日俺に会いに来るなんてさ」
「ちゃんと仕事終わってから来てるに決まってるだろ」
そう言いながらベッドの隣の椅子に腰掛けると、臨也は静雄の方へ頭を動かした。
…こう見ると、目が見えている人となんら変わりはないのだ。
なのに、その目を隠すように包帯が巻かれていて、その下に瞳は存在しない。
思い出す度に胸が酷く締め付けられる。
臨也が、静雄がその犯人だと知っていたら、もう少し関係も違ったのかもしれない。
いっそのこと、ばらしてしまったら――
…でも、1週間も騙してきて、今更そんなことは出来なかった。
時間が経てば経つほど、口が重くなるのは解ってはいた。
そして今日も隠したまま、意味のない会話をするのだ。
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