Novel1

□水天彷彿
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いつもの昼下がり。
臨也は、人のいない閑散とした屋上で、貯水タンクにもたれ掛かっていた。

授業は面倒臭い。
受けなければ解けない問題も無くはないのだが、生憎一般人よりは頭も良いという自覚がある。

…と言うわけで、臨也は授業をサボった。
まぁ実際、ただの言い訳に過ぎないのは承知しているけれど。


…それにしても、授業に出ないのも、やることがなく暇というもので。
つめたく冷えたアスファルトに座り、これまた更に冷たい貯水タンクに凭れる。
臨也の隣のクラスで足らない頭を必死に回転させているだろう静雄を考えると、思わず笑みが溢れた。

「腕力は長けてるくせに…
脳味噌の分、持ってかれたのかな?」



「何か言ったか?」

予想外。
独り言に返事が返ってきた。
驚きと同時に振り返れば、
今の今まで考えていた、金髪のあいつがいた。

「…シズちゃん、授業サボったの?」

「手前もサボってんだろ」

僅かに嫌悪を滲ませつつ、静雄は臨也の凭れる貯水タンクの裏側に腰を下ろした。
わざわざ顔を合わせないように裏側に座るところは静雄らしい。
そんなことを思いながら、タンクの裏で座っている静雄に笑いながら言う。

「そんなに俺と顔合わすの、嫌だ?」

「…あ?
わざわざ喧嘩してぇのか、手前は」

苛立った声が返ってきて、
いつも俺の挑発をすぐに真に受けるから悪いんだよ。
そんな言葉が口を突いたが、臨也は口を開かなかった。
…言えば喧嘩になることくらい、分かるに決まっている。
代わりに、つれないなあ、なんてぼやけば、何か言ったか、と低い声。

「別に、何も言ってないよ」

「…そうか」

疑っているような声色をさせながらも、静雄は口を閉ざしたようだった。


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