Novel1

□一方通行、道は無し。
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信じたくない。
シズちゃんに彼女なんて。
嘘だ。

祈りながら、それでも勝手に思考を巡らす頭に苛立ちを隠せなかった。

確かにここ最近、静雄は妙に落ち着かなかった。
多少の挑発は効かない。
喧嘩の頻度が減った。
時には上の空。
薄々、何かあったな、とは勘付いてはいた。
まさか、色事とは思わなかったけれど。

とりあえず、シズちゃんに会いに行こう。
確かめよう、事実を。



静雄の在籍する教室に着く。
教室の端。そこには、見慣れた傷んだ金髪があった。

向かい合わせた机。
その反対側には、髪の長い、物静かそうな女子が、静雄と会話していた。
遠くてその内容は聞こえないが、その女子が笑う度に、後姿の静雄の髪がふわふわと揺れる。
その机には、可愛らしい弁当箱が2つ。
購買のパンばかり持っていた彼の手には、小さくすら見える箸が握られていて。

臨也は、踵を返した。
足早に教室を離れて、自身の教室へ戻る。
昼休み真っ只中で女子の楽しそうな笑い声が響く教室で、臨也は机に突っ伏した。


確か、あの女子は、今年シズちゃんと同じクラスになった奴。
じゃあ、所詮、知り合ったのは今年だろう。
そう、どうせ、そんな短い期間の仲。
俺なんて、それより1年も前から、シズちゃんを知っていて、

同じ時からずっと、シズちゃんが好きなのに。

入学して直ぐ、新羅から紹介され、喧嘩をした時、静雄に興味を持った。
その時から、好きだったのだと思う。
一目惚れ。まさにそれだった。
でも、俺もシズちゃんも男で、
しかも喧嘩ばかりをする仲で。
そんな関係で告白なんて、誰が出来ただろう。
当たり前のように想いを伝えることはなく、
ただひたすらに乙女みたく想い続けたまま、もう1年半が過ぎた。

片想いだと、自覚はあった。
だから、当然の結果だとも思っている。
…それでも、受け入れるには唐突すぎて。


高く上がる嬉々とした笑い声。
その中に紛れて、声を殺して泣いた。




***

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