Novel1
□一方通行、道は無し。
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現代国語の時間。
退屈ながらに興味を示したものは、やはり人間に関することだった。
「コンコルドの誤り、ねぇ…」
***
静雄に彼女が出来た。
それは2日前、友人たちの口から聞かされた事実だった。
『あれ、シズちゃんは?』
臨也はその相違に、思わず問い掛けた。
昼休み。
いつもならいるはずの静雄の姿が見当たらず、臨也は門田と新羅に尋ねた。
すると、門田は苦笑を滲ませる。
問い掛けるように首を傾げると、門田は言った。
『静雄は、彼女と弁当食ってるぜ』
臨也は、まるで一時停止を押されたテレビのように、目を丸くして固まる。
シズちゃんに彼女。
あの猛獣に?
嘘だろ、何かの間違いだろ?
信じられない、と言いたげな眼で門田を見た臨也に対し、新羅が口を開く。
『そうそう、今日は弁当作ってもらった、って嬉しそうに話してたよ』
ねぇ、と同意を求めた新羅に対し、門田は『ああ』と頷いて見せた。
嘘。
嘘だ。
最愛の都市伝説であるセルティの話をし始めた新羅に対し、臨也は黙り込んだ。
それを疑問に思ったのか、門田が心配そうに臨也を見る。
その視線を避けるように、臨也は唐突に立ち上がった。
『今日、食欲無い』
『あ?全く食ってねぇだろ、少しくらい腹に入れた方が…』
『いらない』
門田の心配を掻い潜り、臨也は屋上を走り出た。
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