Novel1

□Cold Remedy
1ページ/6ページ


「え、シズちゃんが風邪?」

一見すれば、何時もの喧騒の池袋。
でも、1つだけ違う点がある。

自動喧嘩人形、平和島静雄が、池袋の街でその姿を見せていない。
それもそのはず、
平和島静雄は、風邪をひいて自宅療養中なのだ。
それを知ったのは、高校からの友人である門田がわざわざ臨也に報告したから、であった。


「シズちゃんも風邪なんてひくんだ、馬鹿なのに」

「おいおい…
静雄も人間なんだから、風邪くらいひくだろ。
まぁ、高熱じゃなかったみたいだけどな」

門田の言葉に、臨也は「へぇ」と、無関心を装って返す。
内心は、慌てふためいていたのだけれど。

「見舞いに行くんだろ?」

突然の門田の言葉に、臨也の眉がぴくんと上がる。
見透かされたような言葉に焦りながらも、
「体調管理の甘さを馬鹿にしに行くんだよ」と憎まれ口を叩いた。

しかし、臨也や静雄といがみ合いをしていた訳でもなく一緒に居た門田にはやはりばれているようで、
呆れたような溜め息と苦笑を零した。

「それでも良いから、行ってやれよ。
喧嘩はしない方が良いけどな」

「…うん」

気張ったところで意味が無い事に不服だったものの、素直に頷き、静雄の家に向かうことにした。


シズちゃんが風邪。
あの、叩かれても殴られても刺されても撃たれても死なないシズちゃんが。
熱を出して、自宅療養。
信じられない。
でも、ドタチンはつまらない嘘は吐いたりしない。
恋人でもないのに、友達でもないのに、喧嘩仲なのに、
これはきっと、信じられないから見に行くだけ。
だけ。それだけだ。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ