リクエスト

□桎梏恋慕
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「何考えているの?シズちゃん」

静雄は、何も言わずに何時ものように笑顔を繕う。
まるで疚しいことなど無いかのように。
そして、その唇はふと呟いた。


「好きだ、臨也」


「…な、に言ってるの?」

一生聞くはずも無いと思っていた言葉に、動揺を隠せない。
ときめかなかった、と言えば嘘になるが、そんな場合ではない。
このまま捕まっているのは癪に障る。

「ねぇ、解いてよ。
それとも、監禁する趣味でもあるの?」

「あるわけねぇだろ」

静雄は臨也に覆い被さったまま壁の掛け時計に目をやる。
そして向き直ると、再び唇を重ねた。

――臨也は違和感を覚える。
身体が、引き出されるように熱を帯びていく。それも、内側から。
何かがおかしい。

その時、静雄の歯が臨也の唇に立てられた。
幾ら優しく噛もうと、彼の力は一般人の数十倍。
ずきり、と痛みが走り、犬歯が唇に傷を作る。
途端。

「っあ…」

びり、と背筋に痺れが走り、下半身が疼いた。
唇、舌と噛まれ、口内に鉄の味が広がる。
しかし、まるでそんなことは知らないとでも言うように静雄は容赦なく歯を突きたてた。
その度に、痛みよりも先に脊椎に甘い感覚が届き、広がる。


静雄の唇が離れた頃には、臨也の唇には数ヶ所に傷が刻まれ、血が唇の曲線を彩るように伝っていた。
赤い頬で荒い息を繰り返しながら、臨也は勘付き、半信半疑で問い掛けた。

「さっき飲ませたのって、媚薬かなんか…?」

静雄は、ふ、と笑った。
ご名答。その笑顔は物語る。
傷を作られることにすら快楽を覚える自分の浅さを悔しく思いながら、
易々と淫薬を飲まされてしまったことにも嫌悪した。

「気持ちよかったんだろ?噛まれただけで」

「違うに決まって、る…っ」

反論の途中に静雄の手が臨也の頬に触れ、優しく撫でた。
それにすらびくりと身体を震わせた臨也に快感を覚えながら、
静雄は頬を撫でたてをゆっくりと首筋まで這わせた。
白い肌は赤く上気し、震える。
血に塗れた唇を更に噛み締める臨也は、肌に触れられただけで上がりそうになる嬌声を堪えていた。
しかし、再びキスを強いれば唇は容易く静雄の舌を受け入れる。



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