リクエスト

□桎梏恋慕
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臨也と静雄は多分、付き合っている。

どうして多分かって?
どちらが告白した、というわけではないから、だ。
簡単に言えば、世間一般で言う恋人同士に値する肉体的関係。
故に、互いに付き合っているかと聞かれれば肯定する。
だがそれに対する重さは微塵も無い。
それだけ、だった。




何時ものように、臨也は静雄の家に来ていた。
暇を持て余すようにベッドに転がっていると、トイレから帰ってきたらしい静雄が呆れたような表情で臨也を見る。
仰向けに寝転がったまま視線を合わせた臨也は、ニヤリと不敵さと艶美さを兼ねたような笑みを零した。

「抜いてきたの?」

「アホか」

眉根を寄せて言った静雄はそのまま臨也の方へ歩み寄ると、ベッドへ方膝を乗せて臨也へ被さる。
一瞬高鳴った胸は甘い鼓動になり、臨也は頬を緩めた。
静雄は、それに目を細める。

そして、唇を重ねた。
唇を舐めた静雄の舌をその口腔へ導き、滑った舌が重なり、絡み、淫猥な水音を立てた。
臨也は、このキスは好きだ。
細部から溶けていくような、貪りあうような、甘い官能を感じる。

いつもの慣れた展開。
そう、そこまでは。


突然、口内にカプセルのような物が入ってきた。
絡められていた舌は動きだせず、仰向けにされていたせいで、何かを理解する前に喉の奥に流れていった。
そして、手首を締め付けられる違和感を覚える。
驚いて頭上に纏められた手元を見ようとも、静雄の唇がさせてはくれない。

一度に色々なことが起きて硬直したまま静雄に口内を犯されていた。
知らない奴にこんなことをされれば抵抗するのだが――
何処かに『シズちゃんだから』という見縊りがあったのかもしれない。

唇が離れ、臨也は自分の手首を確認する。
手首は先刻ベッドに掛けてあったネクタイで縛られていた。
普段着がバーテン服の彼のベッドにネクタイが掛けていることから、不審に思うべきだった。
臨也は、冷や汗が額を滑る感覚を覚えながら、平静を装って静雄を見た。


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