リクエスト

□唇の温度
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自分の中を静雄の昂りが占拠する感覚に、臨也は熱っぽい息を吐いた。
抵抗する気も無く、臨也は動いても良いよ、と言う合図に悪態をつく。

「シズちゃんのって、無意味にデカいよね」

「は?テメエだって気持ち良さげに咥え込んでるくせに何言ってやがる」

静雄は、情欲をまざまざと滲ませた顔でそう言うと、自身を引き抜き、浅いところをピンポイントに突いてやった。

「あァ!」

臨也の好きな場所はお見通しで、前立腺を突き上げられる快感に背を弓なりに仰け反らせる。
続けて同じ場所を突いてやれば、臨也の唇からは甘い喘ぎがはらはらと零れた。

「ひっあ…ん、あっ…ぁん」

「気持ち良いんだろ?」

静雄の詰るような声に、シーツを掴んでいた臨也の手は静雄の首に絡みつく。

十分に覚えさせられた身体は、自我を破損させても静雄を求めるようになった。

「気持ち、い…っ、もっと、ちょうだい、もっとぉ…っ」

甘ったるい快楽を望む声に、静雄は前立腺を擦りながら腰が浮き上がるほど強く奥を突いた。
処女なら悲鳴すら上げるだろうその行為すら、臨也の中では快楽にすり替わる。
何度も突かれ、口を閉じることすら出来ないまま断続的な喘ぎを零す臨也は、訪れる絶頂に静雄の背に爪を立てた。

「も…ダメぇ…イク、シズ、ちゃ…」

言い終わらないうちに、静雄は臨也を深く突き上げ、
悲鳴のような嬌声をあげながら臨也は快楽を吐き出した。
静雄の欲望の塊が吐き出されるのを、身体の奥に感じながら。



「シズちゃんって、年がら年中発情期なの?」

「臨也も盛ってんだろ」

布団に潜り込んだ二人は、ぽつぽつと他愛も無い会話をする。
不意に静雄の骨ばった手が臨也の髪に伸び、くしゃりを無造作に撫でた。
どきり、と鼓動が高鳴る。



俺は、シズちゃんが好きだ。
それに気がついたのは、身体を重ねて何回目だっただろう。
喧嘩相手なのに、挑発から始まった関係なのに、シズちゃんは優しい。
初めて彼を身体を重ねた時、実際は慣れてもいない俺に気遣いながらの愛撫に、身体が痺れるような感覚がした。
セックスした後は毎回、まるで女の子を気遣うように優しくて。
この、頭を撫でてくれる手が愛しくて堪らない。
俺が女役なことも、快楽には弱いことも、シズちゃんにとって俺の弱味にしかならないだろう。
なのに、その事には喧嘩中は全く触れない。
以前訊いてみたら「俺にも臨也にも利益にはならねぇし、そんなので弱味握られるの嫌だろ」と言う、平和ボケしたような台詞が返ってきた。

…所詮、身体で繋がっている仲だという事は解っている。
でも、好きになってしまったのだ。
時たま、ふと胸に過ぎるように誰かが囁く。
「キミはシズちゃんの性欲処理の道具に過ぎないんだよ」
解っている、それくらい。
ただ、愚かにも何処か希望を抱いている自分がいた。




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