リクエスト

□雨の日の忘れ物
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すると、静雄は沈黙した。
何なんだ、と目をぱちくりさせた臨也へ、静雄は至って普通に中々とんでもない事を言った。


「一緒に傘入ってくか?」


「…は?」

あまりにも予想しなかった言葉に、臨也はきょとんとした。
そんな臨也をお構い無しに、静雄は「急げよ」と言うと、廊下へ出て臨也を待つ。
状況が把握しきれないままに荷物を取り廊下へ出ると、静雄は歩き出した。追いつくように臨也も歩き出す。
臨也は半信半疑で眉を顰めながら問い掛けた。

「ねぇ、本気で言ってるの?」

「嘘吐いてどうするんだよ」

静雄は呆れたように笑った。

二人で入ったら傘は狭いだろう。
相合傘をすることに抵抗は無いとしても、間違いなく双方とも肩が濡れるわけだ。

そうこう考えているうちに、玄関へ着いてしまった。
まごつく臨也を再び急かしながら、静雄は傘を広げ、雨が降りしきる外へ出た。


外は窓際の景色通りの雨で、明日の体育の授業は潰れるだろうと何人かの生徒が予想しただろう。
半ば無理矢理に傘に入れられた臨也は、自分より背の高い静雄の歩に遅れない様に早足で歩いた。

やっぱり、相変わらず何を考えているのか解らない。
妙に気恥ずかしくなり、そっぽを向いた臨也は、ふと気がついた。

「シズちゃん、俺濡れてないよ」

思わず言ってしまった。
臨也は自らの濡れていない肩を指差す。
それを見た静雄は、ふん。と鼻を鳴らすと、気にすることも無く臨也から視線を外した。
その静雄の肩は、雨に曝されて僅かに肌の色を透かしている。

シズちゃんの傘なのに。

そう思うと、胸がきゅっとした。



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