*アイタイ。

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静雄の家は、もぬけの殻だった。
予想はしていたが、やはり直面すれば狼狽えて。
ただ、部屋を探しても、ジャケットや携帯や財布は無く、無理矢理に連れ出された訳ではないのは分かった。

…じゃあ、何処に行ったんだ。
携帯も繋がらない上に、書き置きすら残さずに出ていってしまった臨也に、
不安と苛立ちの入り交じった溜め息を吐き頭を抱える。
もし行きたい場所に行ってから、何かに遭遇したのなら。
そう考え、玄関を出た。

…ふと、眼に入った場所。
もしかしたら、そう思い、祈るような思いで、近くのビジネスビルへ走った。


以前二人で訪れた屋上は、いつもと変わらず強い風が吹いている。
人影はない。期待した分だけ肩を落とし、次の心当たりの有る場所まで向かおうと踵を返す。

…ふと、視界に入った、金属屑。
近寄ってみれば、何かの機械が潰された残骸だった。
…その機械には、見覚えがあった。

「臨也の、携帯…」

確かな証拠は無い。
でも、状況も打ち込む暇も無かったメール、たった四文字もままならなかった言葉を踏まえたとき、
この携帯の状況は嫌に一致して、それと同時、やはりただならぬことが起きていることを暗示していた。
…だからと言って、どうしろと言うのだ。
屑になった携帯が見つかったところで、どうなるというわけでもない。
悔しさと自分がどうにもできない虚しさに、歯噛みした。


…ふと、テレビで以前放送していた番組を思い出す。

携帯は、保存機能を持つ小型のカードによって動いている。
そのカードを差し替えれば、保存してあるデータを他の携帯でも見られる、という話。
流し見しただけだったが、携帯を買い換えようと思っていた頃に観た内容だったため、記憶していた。

幸運なことに、臨也とは機種が一緒。
もしかしたら、データに何かヒントになるものが有るかもしれない。


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