*ONE DAY, ONLY DAY

□Daily.MASAOMI KIDA
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「それにしても…臨也さんが頼んだ運び屋って、誰だろうね?
妙に楽しそうな声だったし。
正臣は分かる?」

微笑みながら訊いてきた沙樹に、「誰だろうな」と返した。

…正直なところ、目星はついていた。

「首無しライダー…」

呟けば、沙樹が正臣を見上げ、尋ねるように口を開く。

「首無しライダーって、池袋の?」

「…わかんねぇけどな」

苦笑して言えば、「そっかぁ、首無しライダーかぁ」と微笑んだ。
正臣の1歩先を軽い足取りで歩きながら、沙樹はくるりと正臣へ振り返る。

「正臣は知り合いなんだっけ?首無しライダーと」

「んー…知り合い、っつうか、たまたま関わっただけ、っつうか」

関わったことはあるが、深いものではない。
思案しながらそう言った正臣に、へぇ、と相槌を打った沙樹は、前に向き直り――

「正臣、首なしライダーって、あれじゃない?」

唐突に訊かれた言葉に、彼女が指差す先に目を向け…

「…ぽいな」

久しぶりに見た都市伝説の姿が、そこにあった。
此方の視線に気がついたのだろう、首無しライダーの方も、正臣と沙樹の方を見た。
用がなければ此処まで来ることは無いだろうし、臨也の言葉からしても辻褄があう。
…しかし、最後に会ったのが、黄巾族を抜けたあの夜。
あまり印象が良いものではないのも、承知している。

僅かに警戒しながら、正臣は沙樹と共に、
何処か肩を落としながら、バイクの影をほどいて小包を取った彼女の方へ歩んだ。
向こうからも歩んで来たため、人間なんじゃないのか、と疑いながらも、目の前で互いに止まる。

PDAを取り出した首無しライダーに、正臣は僅かに警戒しながら打ち込まれた文面を見た。

『久しぶりだな。元気か?』

思いの外優しくかけられた言葉に、僅かに驚く。
やっぱり、都市伝説にしては人間味が溢れていて、ちぐはぐな気がしてならない。

「…はい、お陰様で」

何処か安心しながらそう返す。
すると、首無しライダーは手に持った荷物を差し出した。
…彼女だって、最後に会ったのが血塗れの状態だったため、印象だって良くない上に、
正臣、帝人、杏里の関係だって知っていておかしくない。
やりにくいに決まっているだろう。
…多分、わざとだ。

正臣は無意識に顔をしかめながら、お礼を言って受け取った。



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