Novel3

□小指まで愛するように、
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『ごめん、今日は用事がある』

最近、シズちゃんが素っ気ない。

臨也は、自宅のベッドの上で独り思う。
今日だって、遊びに行こうと誘ったのに断られた。

「いや、シズちゃんは元から愛想悪いし…」

自分を慰めるように呟いてみるけれど、悪足掻きに思えて惨めになる。
せめて、機嫌が悪いだけなのだと思いたい。
付き合い始めてもう3年経つが、静雄はずっと優しかった。それなのに今更冷たくなるなんて、信じたくない可能性が頭を掠めて仕方がないのだ。
勘違いだと思いたい。素直に尋ねればいいのだけれど、それすらも臆病になっている自分がいて。
いつからこんなに弱気になったのだろう。
別れたくない。傍にいたい。嫌われたくない。
――けれど、別れたいと静雄が思っていて今の状況があるなら、また別なのだ。
更に嫌われる道を選んでまで、傍にいたくはない。
ふと取り出した携帯のメールの受信履歴を見れば、ここ数日の件数の少なさに唇を噛み締める。
信じたくない。考えたくない。
『別れよう』
待ち構えてるだろう言葉に、覚悟を決めるしかないのだと瞼を閉ざした。



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