Novel3

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「俺が寝なきゃ、手前を忘れずにいられるかもしれない…とかは」

その言葉に、ハッとした。
そんなこと、考えたこともなかった。
けれど、臨也は笑って見せる。迷惑なんかかけたくない。静雄に無理をさせてまで、傍にいるのは胸が痛い。

「試したけど駄目だったよ」

「そうか…」

静雄が再び沈んだ表情をして、俯いた。
シズちゃん、俺は、そう思ってもらえただけで満足だよ。
優しい暖かさに包まれた胸は相変わらず痛む。静雄の肩に寄りかかれば頭を撫でられて、視界が滲んだ。
恋人として、傍にいたい。離れたくない。でも、俺の気持ちだけじゃ辛い。

「このまま、溶けて消えちゃいたい…」

ぽつりと囁いた声に、静雄が此方を見た。
このままずっとこうしていられたら。願っても、今日という日は静雄の記憶を明日に繋ぐことを許さない。
…と、静雄の手が臨也の肩を掴んだ。首を傾げて顔を上げた臨也に。

唇が、触れた。

触れるだけの、優しい甘いキス。
静雄が記憶を無くすようになる前までのキスよりは幾分大人しい。けれど、苦しいくらいに胸が高鳴った。

一秒足らずで唇は離れる。そのまま抱き締められ、喉が詰まった。
変わらない、ほんの少し痛いけれど愛情で満たされた優しい腕。何度も抱き締められてきた腕。
溢れそうになる涙を堪えて息を止める臨也の耳元を、静雄の吐息が掠める。優しい、優しい声。


「…臨也が、好きだ」


一目惚れってあるんだな、そう照れ臭そうに笑った静雄。堪えていた涙は、堰を切ったように溢れ出した。
背中をさする手が、臨也の心を揺らす。
でも、だめ。

「俺も、シズちゃんが、すき…っ」

大好き。嗚咽とともに囁いた言葉に、静雄はやっぱり恥ずかしそうに笑った。
忘れてしまいたくないと、思った。



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