Novel2

□love knot
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こうして静雄とたくさん触れ合った帰りは、いつにも増して酷く寂しくなる。

「シズちゃん仕事休んじゃえばいいのに」

「簡単に言うなよ。トムさんに世話になってるし、そんなことしたらヴァローナに何言われるか分からねぇ」

溜め息をつきつつ何処か楽しげに言った静雄に、臨也は下唇を噛む。
仕事と私どっちが大事なの、だなんて馬鹿な女みたいなことは言いたくない。けれど、胸中で渦巻く感情はそれに相違なくて。
静雄が自分を捨てて、上司や後輩と付き合うとは思いたくない。けれど、不安にならないと言えば嘘になる。
そんな自分が嫌だ。

「そんなの分かってるよ。じゃあ、また明後日」

「――…」

極力、いつも通りの調子で言ったはずだった。
けれど、静雄には当たり前のようにお見通しで。

「次、たくさんキスしてやるよ」

そう微笑んだ静雄の唇が、臨也の額に口付ける。どきん、と震えた胸は甘いのに、やっぱり寂しさは拭えず、額だけじゃ物足りなくて。
けれどそれを口に出すのは憚られて、臨也は頷いて見せた。



今は、彼に惜しみ無く愛されている自信がある。自分の方が彼のことを愛していると言い切れる自信だってある。
…だからこそ、きっと俺は重い。
今ですら、静雄に関わる人間全てに胸を焦がしているのに、今よりも静雄を好きになってしまいそうだと思う。
その上、自分も静雄も男。こんな関係など静雄は絶対に嫌になる。
永遠なんて無いのだ。今は何処が終わりか見えなくても、人に寿命が有るように必ず終わりは訪れる。
だったら気持ちが繋がっているうちに、愛を注げるだけ注いでしまった方が良いに決まっているじゃないか。愛情に底はないのだから。
諦めてるんじゃない。終わりを見据えているだけ。
そうでも思わないと、捨てられたときが怖いから――。



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